SED(Society of Economic Dynamics)の年次総会に顔を出してきた。日本人の方もちらほら発表していたり、参加したりしていた。マクロではNBERが開催する一連の学会と並んでもっともレベルの高い学会なので、もっと発表者・参加者が増えるとうれしい。ここで見聞きしたペーパー、 感じたことについてはまた追々書こうと思う(とか言っていつも書かないで終わるのだけれども…)。
今回は、最近話題のペーパーについてちょっとだけふれる。Song, Price, Guvenen, Bloomによる"Firming Up Inequality" だ。Guvenenは最近、Songを通じてのみアクセスできると思われる税申告書をベースとするデータ(Social Security Administrative Data)を使って、所得の不平等についてたくさんの論文を書いている。Songは基本的にデータを提供することで名前を載せているのだと思っていたら、このペーパーではアルファベット順を無視して筆頭著者となっている。興味深い。
そんなことはさておき、このペーパーでは、労働者側の所得のデータに、企業を特定する情報が含まれていることから、アメリカで1970年代ごろから顕著に上昇した所得の不平等の増加が、「企業内」の所得不平等の増加によるものか、「企業間」の所得の不平等によるものか、について分析をしている。主要な結果は以下の2つのようだ。
1.1978年から2012年の所得の不平等度合いの上昇は、全て「企業間」の所得の差の増加によるものだとわかった。
2.逆に、「企業内」における所得の格差は1978年から2012年の間ほとんど変化していないことがわかった。この発見は、CEOの所得が他の労働者に比べて大きく増加した(ことが所得の不平等の一因である)とする既存の研究とちょっと相反した印象を与える。
多分本文を読めばわかるのだろうが、College Premium(大卒の労働者と大学を出ていない労働者の間の賃金の格差)が同じ時期に大きく上昇したこととどのように整合性を取れるのだろうか?このような、いろいろなことを考えさせられる研究であることは間違いない。日本でも同じような研究ができると面白いと思う。
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