Papers at AEA, Part 3

もう一回だけ、フィラデルフィアのAEAで見たペーパーについてのメモ。今回は、Valerie Rameyがオーガナイズした「伝統的・非伝統的政策の財政乗数」セッションのペーパーを紹介。

"The Effects of Tax Changes at the Zero Lower Bound: Evidence from Japan"
Wataru Miyamoto, Thuy Lan Nguyen, Dmitriy Sergeyev
日本の財政政策の変更がGDPに与える影響をナラティブ・アプローチ(新聞や官報などに書かれた情報を元に、財政政策の変化を識別するアプローチ。景気の変化と関係ない財政政策の変更を書かれた情報を元に識別することで、(景気の変化に反応したわけではないという意味で)外生的な財政政策の変化だけを見ることができる)を使って分析。特にゼロ金利以前と以後のデータを比較して、ゼロ金利の元では財政政策の効果が強くなるというゼロ金利のモデルの特徴がデータで支持されるかに注目。財政政策の変化がGDPに与える影響はゼロ金利以前と以後の期間で有意に変わらなかった。討論者も指摘していたけど、全部で3回しか引き上げしてないのに消費税引き上げの効果をゼロ金利実施前と実施後で比較とかしちゃあまずいのでは。

"Unconventional Fiscal Policy"
Francesco D'Acunto, Daniel Hoang, Michael Weber
ドイツで2005年にVAT(消費税と思えばよい)の税率が2007年に3パーセンテージポイント引き上げられることが急に公表された。著者らはこれを「非伝統的な財政政策」と呼んで、その効果を分析した。このアナウンスメントの結果、ドイツでは(VAT税率引き上げが実施されなかった他のEU諸国(=コントロールグループ)と比べて)2006年に翌年の期待インフレ率が上がり、実際に2007年のインフレ率も上がった。アナウンスメントの後では(コントロールグループである他のEU諸国に比べて)今は耐久消費財を買うのによい時期だと答えた家計の割合が34%増加した。日本の消費税の引き上げのときもそうだけど、実際にVATの税率が引き上げられた後で耐久消費税の購入が落ち込んだらあまり意味はないのでは。

"What Do We Know About the Effects of Austerity?"
Alberto Alesina, Carlo Favero, Francesco Giavazzi
16のOECD加盟国で過去30年に実施された170の緊縮財政(Austerity)エピソードが、支出の引き下げが中心か増税が中心かによって、GDP等への影響がどのように異なるかを分析したペーパー。緊縮財政が実施されるときにはいろいろな政策がパッケージとして一緒に実施されることにも注意を払っている。支出の切り下げがメインの場合は、軽度の増税も同時に行われることが多いが、GDPへの負の影響はとても小さく(GDP比1%の支出切り下げパッケージはGDPを0.5%下げる)、そして短い(影響は2年程度だけしか続かない)。その上、緊縮財政が不況でない時に行われた場合は、GDPへの負の効果はゼロである。一方、増税がメインとなる緊縮財政パッケージの場合は、支出の切り下げは同時に実施されないことが多いものの、GDPへの負の影響はとても大きい(GDP比1%の増税メインの緊縮財政パッケージはGDPを2%引き下げる)上に、負の影響は長く続く。

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