Price Theoryを「プライステイカーを仮定した部分均衡分析」のように狭く定義すると、若い経済学者でPrice Theoryの研究をしている人達を含むことができず、古いもののようにとらえられてしまうので、ふさわしい定義にたどり着くまで苦労したと述べている。
Weylが満足するPrice Theoryの定義は以下のものである。
"Analysis that reduces rich (e.g. high-dimensional heterogeneity, many individuals) and often incompletely specified models into ‘prices’ sufficient to characterize approximate solutions to simple (e.g. one-dimensional policy) allocative problems"
意訳してみると「(様々な種類の異質性や多くの経済主体と含むという意味で)複雑でしばしば不完全にしか示されないモデルを(一次元という意味で)簡単な分配問題の解として近似するために十分な「価格」に落とし込む分析」となるだろうか。 かなり硬い訳をしてしまった。もっと自然な訳し方があれば教えて欲しい。
Weylは、彼なりの定義の理解を助けるために、Price Theoryの4つの特徴を挙げている。
- 需要と供給の図のようなわかりやすい図によって、複雑なモデルの(近似)解がわかりやすく示される。
- Price Theoryの宿題(Problem Sets)においては、単純だけれども厳密なモデルを解いたりデータを分析したりはせずに、大まかに定義されたモデルにおいて分配や政策について問うものが多い。例として、需要独占がある場合、最低賃金引き上げは常に雇用を増やすか?という質問を挙げている。
- Price Theoryにおいては、複雑な構造モデルをそのまま解いて推定したりせずに、関心のある問題に対する答えを特徴付ける簡単だけれども十分な統計量(Sufficient Statistics)を得ることに注力する。Raj Chettyがこのアプローチで有名だ。
- この意味で、Price Theoryは社会学や熱力学と共通点が多い。これらの分野では、複雑な分析対象を単純なものに落としこむ。これらの分野と対照的なのは、複雑な分析対象に対して、それをそのまま解いたり(数学)、個々の例に焦点を当てたり(心理学)、帰納的なアプローチをとる(臨床疫学や歴史学)分野だ。
Price Theoryといううものをよくわかっていない僕にはとても面白い文章だった。ただ、広義すぎるというか、Sufficient Statistics Approachというか、最近の公共経済学についての解説を書いて、それをPrice Theoryと呼んでいるといえなくもない。
No comments:
Post a Comment