Monday, February 29, 2016

A Casual Comparison of Public Pension

自分の本業であまりこういうことはやらないのが残念なんだけど、国際比較というのは楽しい。OECD(いわゆる「先進国クラブ」とEconomist誌はいつも注釈を付けている)が、いろいろな面でOECD各国を比較したデータや印刷物を出しているのだけれども、公的年金についてのものがあったのでいくつか取り出してみた。全部の国を見ると大変なので、日本、アメリカ(小さい政府の代表)、イギリス(大体の面においてアメリカからちょっと大陸ヨーロッパにシフトしたような感じになる)、スウェーデン(大きな政府の大陸ヨーロッパの代表)、とOECD平均を比較してみた。

それぞれのデータがどのように作られているかなどをぜんぜん気にせず見ているので、専門家は突っ込みたくなるかもしれないけれど、そのときは突っ込んで欲しい。

では、まずは、公的年金がどのくらいもらえるかの比較。
最初の列(Median)は働いていたときの所得がちょうど真ん中あたりだった人が、働いていたときの平均的な給料に比べて何%くらいの公的年金をもらえるか、を示している。いわゆる、Replacement Ratioと呼ばれる指標だ。日本の場合は、働いていたときの給料が中間あたりの人は、そのときの給料の38%くらいの公的年金がもらえる。この数字はイギリスとほぼ同じである。アメリカは意外とそれより高くて41%。スウェーデンは予想通り56%ととても高い数字となっている。まぁ、日本の場合、多分いわゆる企業年金部分が含まれていないから低めに出るのはしょうがないのかな。OECD平均をとると、この数字が高い国が大陸ヨーロッパに沢山あるので、スウェーデンの数字と同じくらい(58%)となっている。

では、この数字はどのくらい累進的かを見るために、給料が平均の人(Mean)と、平均の半分の人(0.5*Mean)と平均より50%多い人(1.5*Mean)が、それぞれの働いていたときの給料の何%暗い、公的年金をもらえるかを比べたのが2-4列目である。ちょっとわかりにくいかもしれないが、平均の半分の給料の人の数字が高いからといって彼らのほうが高い額をもらっているのではなくて、彼らの(低い)給料に比べて高い比率をもらっているということである(もちろんこの数字が非常に大きければ絶対額も逆転することはありうるけれどもそんなことはどこの国でももちろん起こらない)。日本は収入が高くなるにつれ50%→36%→31%となだらかに減っていく。つまり、累進性はそんなに高くない。UKは日本より累進性が高い、つまり、年金の金額の平等度が高いことがわかるだろう。アメリカは、予想通り日本より累進性が低い。スウェーデンはなんだかおかしなこと(単調減少でない!)になっている。元データの間違いなのかな。OECD平均では、日本より累進性がちょっと低いように見える。


次は負担の面を見てみよう。上の表の1列目は、65歳以上の人が労働人口(15歳から65歳までの人)に比べてどのくらいいるかという数字を示している。日本の場合、65歳以上の人の割合が労働人口の42%もいる。アメリカは移民も多く比較的若い国なので比率は23%だ。UKとスウェーデンははその中間くらいの29%と33%。OECD平均は、26%である。日本がダントツで高齢者が多いことがわかるであろう。

更に、日本の問題は、年金の元手となるお金を納める労働者が少ないことである。上の表の2列目はEmployment/Population Ratioといって、労働人口(15歳から65歳の人)のうち働いている人の割合を示している。女性があまり働いていないなどという話をよく聞くものの、日本のE/P Ratioは71%と、とても高いレベルにある。UKは日本とほぼ同じ、アメリカは67%と、ちょっと低め。スウェーデンは74%と、さすがに日本より更に高い。OECD平均では、おそらく失業率が高い南欧の国とかが平均を引き下げているのであろう、この表のどの国よりも低い65%である。

もちろん、日本の場合であれば、パートタイムでも「働いている」とカウントされるので、どのような形態で働いているかはこの数字からは細くできない点は注意して欲しい。

これらの数字から二つの数字を計算してみた。一つ目(上の表の3列目のBurden)は、働いている人何人で65歳以上の人を養わなければならないかという指標である。日本の場合、労働者1.7人で退職者を養わなければならない。高齢者の割合が高いのでこの数字が低く出るのは当たり前なんだけれども、これはとても低い数字である。OECD平均は2.6人。アメリカの場合2.9人、イギリス(2.5人)やスウェーデン(2.3人)は日本とアメリカの間である。

もうひとつの数字は、現在の真ん中の収入の人の年金額(日本で言えば38%)を、毎年政府の財政が均衡するようにしつつ、維持するためには、働いている人の収入の何%を徴集しなければならないかという数字である。全ての退職者は同じ比率で年金を受け取り、全ての労働者は同じ税率で税金を納めると仮定している。言い換えれば、財政均衡の為の年金税の税率である。日本は年金の額はあまり高くないけれども、年金生活者の割合が多いので、働いている人の収入の22%を徴収しないと公的年金が成り立たない。日本の財政状況から推測するに、現在の負担額より(おそらくずっと)高い額であろう。消費税全部が補填として使われるにしても多分足りていないような気がする。スウェーデンは年金の支給額が手厚いので日本の同じような税率(24%)となっている。OECD平均も年金支給額が手厚いので同じくらい(23%)である。逆にイギリスやアメリカはまだ退職者の比率が低い上に年金も手厚くないので、15%くらいの税負担で現在の年金がまかなえる計算となる。

おそらく日本は年金に関する収入と支出のバランスが取れていないのだろう。これの状況を改善するには、以下のどれか(もちろん組み合わせてよい)を実施しなければならない。

  1. 退職年齢を引き上げて年金生活者の比率を下げる。
  2. 労働人口を増やす(移民あるいは子供を増やす)。
  3. 年金用の税負担を引き上げる(消費税増税でももちろんよい)。
  4. 年金支給額を引き下げる。
  5. もっと多くの人に働いて(年金用のお金を納めて)もらう。
現在日本の政府はこれら全ての面でトライしているように見えるが、なかなか簡単にはうまく行かないようだ。

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