Friday, September 16, 2016

Invitation to Podcast

長くアメリカに住んでいるのだけれども、一向に英語が上達する気配がない。何でだろうと考えてみたのだけれども、理由のひとつは、研究者だと人と話したりすることが少ないからではないかと思うに至った。大体の時間は一人でコンピューターの前に座っているか、論文を読んでいるか、紙に数式を書いているかだ。発表をするのはそれほどしょっちゅうではないし、人の発表を聞くことは多いがそもそもそんなに問題のない経済学しか聞く機会がない。

できるだけあいてる時間に英語に自分をさらす手段の一つとしてとにかくPodcastを聞きまくり始めた。とはいえ、経済がらみのPodcastもとても充実しているので、結構経済関連のものも聞いてしまう。お気に入りはNPR (National Public Radio)のPlanet Moneyだ。経済学というわけではなく、経済関連なら何でもカバーするが、経済学者が出てくることもある。例えば、世界に石油がなかったら世界はどのようになっていただろうという議論をした回では、NorthwesternのJoel Mokyrが出てきた。書いているものから察すると面白い人なんだろうと思っていたが、話しっぷりも面白かった。1エピソードが1時間くらいのPodcastが多い中、1つ20-30分くらいというのも気晴らしや散歩のお供にちょうどよい。

最近のエピソードでは、(僕が聞き始める)昔のエピソードの再放送だったのだけれども、Chris UdryとDean Karlanのイェール大ペア(とガーナの2人の共著者)による、ガーナにおいてランダム化比較試験を行った結果を基にした2014年のQJEのペーパー("Agricultural Decisions after Relaxing Credit and Risk Constraints")について扱った。多分開発を専門とする人には知られた論文なんだろうけど、他分野なので面白かった。この論文では、アフリカの小規模農家がビジネスを拡大できない理由は、投資するお金がないからか(credit constraint)、それとも失敗するリスクを恐れているか(risk constraint)を知るために、ガーナの農家にランダムに以下のものを提供して、農家がどのように反応するかを見た。(1) 250ドル相当の現金。使途は問わない。(2) 天候リスク保険(雨があまり降らないで農業がうまく行かなかった場合には保険金が支払われる)、(3) (1)+(2)。

この回のPlanet Moneyではこの論文を紹介するのだけれども、イントロとして、アフリカ(レソト)でりんご作りをしている農家に話を聞くところから始まっている。この農家は、りんごを作るのがうまく、ビジネスを拡大すれば需要はあると思われるんだけれども、彼はりんご作りビジネスを拡大する代わりに、家畜を飼うことにした。理由は、雨があまり降らなくてりんごがあまり取れなかったときのリスクが怖いので、(天候にあまり左右されない)家畜に分散投資するというものである。資産の半分をある企業の株式に投資して、残りを国債に投資するようなものだ。このような例や、ガーナ人に保険という概念をわからせる苦労話などを挟んでくれるので、気軽に楽しく聞ける。

その他にも、UdryやKarlanが出てきて話したりするのも楽しい。Udryのオフィスがガーナ関連のモノだらけなどというエピソードも語られる。

彼らの実験の結果は、現金を受け取った農家は投資をあまり増やさなかった。その一方、天候リスク保険を(買うチャンスを)与えられた農家は、投資を増やした。その際、追加的な投資に必要なお金はどこかから持ってきた。これらからわかるのは、この実験の対象となったガーナ農家は、リスクを恐れて規模を大きくしていないのであり、お金は必要ならどこかから調達できる、つまり、強い借り入れ制約に直面しているわけではない、ことである。

日本語だと長時間ドライブとかがあまりないからPodcastは流行っていないのだろうか?日本語でも経済学Podcastとかあれば通学・通勤中に聞く人も多いと思うけど。

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