というわけで、またも、新しい論文のレビューとかではなく、ツイッターとかでみた記事に対する感想文のようなものである。今回は、ダイヤモンド社の記事となっていた「受動喫煙に関するエビデンス」について、あまり考えず思ったことを書くだけにしておく。おそらくは、本にはもっとちゃんと書いてあるんだろうけれども、「学力」の経済学でもううおなかいっぱいで、この本を読む予定はないので、あくまでオンラインの記事だけを読んだ感想である。
- ちょっと最近、「エビデンス」という言葉が、正直言って(言葉は悪いが)うざくなってきている。趣旨には100%賛同するんだけれども、基本的に誠実な研究者は常にやってきたことなので、何か「エビデンス」という横文字で押し捲られると、誰でも知っていることをコンサルの人が横文字で主張してくるときと同じような違和感がある。
- ダイヤモンド社の記事によると、「日本人については「受動喫煙が健康に悪影響を与える」という確たるエビデンスがなかった」らしい。ところが、9つの、統計的に有意でなかった研究をまとめてメタアナリシスにすると、それが強力なエビデンスになるように書かれている。僕は統計とか計量とかよく知らないんだけれども、そういうもんなの?これで通用するなら、僕も今度、10個くらい統計的に有意でない研究を探してこようという気になる。喫煙者ではないし、そりゃ受動喫煙がいい影響があるわけはなくて、あるとしても大きい悪い影響か小さい悪い影響なので、禁止するコストが小さいなら禁止すべきであり、喫煙とかもっとしにくくなるといいなぁと日本で煙もくもくの小さいバーで酒を飲むたびに思うのだけれども、議論としては、JTの人に肩入れしたくなる。
- 次に、飲食店での全面禁煙が飲食店の売り上げに(負に)影響するかという議論がなされているが、それが重要なトレードオフなの?疑問である。一番重要な問題は、喫煙者が幸せになって非喫煙者が害をこうむるという外部性の問題、そして喫煙者の上司が店を選んだら断れないような話なんじゃないかと思うんだけど。
- この質問について日本のエビデンスはないけど、海外については、飲食店の全面禁煙は飲食店の売り上げに影響を及ぼさなかったというエビデンスがあるので、日本でもこのことは当てはまるのと考えるのが妥当であろう、といっているが、なんとなく、自分の議論に都合のいい部分についてだけ外部適用性の評価が甘いのではと考えてしまう。
- どちらかというと、「受動喫煙が健康に悪影響を与える」か否かの方が、国(人種)によって結果に違いはないだろうから、他の国の研究結果を日本に外部適用するのはあまり無茶じゃない気がするんだけれども、「飲食店の売り上げへの影響」というのは、各国の文化に影響を受ける面が大きい気がするので、海外の結果をそのまま日本に持ってくるのには慎重にならなければいけない気がする。特に「エビデンス」という言葉を振りかざしているのであればなおさらではないのか。
- あと、記事を見てて、「公共施設の全面禁煙」と「飲食店の全面禁煙」という言葉が混ざっているのに違和感を覚えた。もしかしたら議論の元になっている研究のいくつかは、「公共施設」を対象としていたり「飲食店」を対象としていたりするのかな。こういうところもっと正確にして欲しい。
(Disclosure) JTからお金をもらったりしてません。
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