Wednesday, March 01, 2017

Modeling Premium Friday, Part 2

前回のポストに引き続いて、プレミアムフライデーがマクロ経済に与える影響を、シンプルな新古典派成長モデルを使って分析してみる。

モデルは前回に紹介したものを引き続き使う。前回書いたとおり、プレミアムフライデーをどのようにとらえるか(どのようにモデル化するのが適切か)について、僕はまだはっきりとわかっていないけれども、まずは、2つの異なる考え方を基に分析してみることにした。前回紹介した考え方は、プレミアムフライデーは、強制的に月末の金曜日の午後に労働者を帰らせることで、オフィスで無駄に過ごしている時間を余暇(あるいは生産的な労働)に開放するというものである。言い方を変えると、プレミアムフライデーは、労働者が自由に利用できる時間(disposable time)を増やすという考え方だ。簡単に想像はつくと思うが、基本的には1日に使える時間が増えるということは、生産に使える投入要素が増えるということなので、前回見たとおり基本的には経済にポジティブな影響を与える。

総需要効果を考慮しない場合、GDP、消費、投資は長期的には約1%増加する。自由に使える時間が増えた時に全てを余暇には回さないので、1週間あたりの労働時間は1時間は減らないものの約0.6時間(36分)減少し、余暇に使われる時間は1週間当たり約0.4時間(24分)増加する。1時間当たりの賃金は長期的にはプレミアムフライデー実施前と同じ水準に戻るけれども、労働時間が長くなるので、所得は増加する(長期的には所得が増加しないと消費は増加できない)。総需要効果を考慮すると、プレミアムフライデーの効果はより大きいものとなる。GDPや消費は1.9%増加し、消費(総需要)の増加がGDPを更に引き上げるので、賃金も長期的には0.9%上昇する。

では、今回は、別の考え方をしてみよう。プレミアムフライデーというのは、月末の金曜日の午後には働くことを禁止することで、労働供給を強制的に削減するものととらえることもできる。もちろん、別の日により長く働くことによって、月末の金曜の午後に働けない代わりをすることができるが、その場合プレミアムフライデーの効果というものはゼロなので、今回は労働時間が強制的に削減され、別の日の残業とかパートタイムを増やすとかで穴埋めができないものと仮定する。具体的には、週当たりの最大労働時間が、プレミアムフライデー実施前は40時間だったものが、39時間に削減されたと仮定する。加えて、プレミアムフライデー実施前は、労働者は週40時間ちょうど働いていたと仮定する。つまり、労働時間の制限がなくても労働者は週40時間喜んで働いていたのだけれども、プレミアムフライデー実施によって39時間までしか働けないこととなったと考える。このような政策の効果は以下に示される。



前回のケースと異なり、プレミアムフライデーの効果は総じてネガティブである。一段目のGDP(左)と消費(右)から見ていこう。総需要効果を考慮しなければGDPや消費は約2.5%減少する。総需要効果を考慮すると、GDPや消費の落ち込みは長期的には4.6%と、非常に大きなものとなる。

2段目の左には投資の動きが示されている。長期的には投資の変化はGDPや消費と同じく、総需要効果を考慮すると2.5%のマイナス、総需要効果もあった場合は4.6%のマイナスである。右には1週間あたりの労働時間が示されている。2017年以降、プレミアムフライデーが実施されたことで、労働時間は上限きっかりの39時間となっている。39時間という労働供給のアドホックな制約に引っかかっている。

賃金は一時的に上昇する。これは、労働時間に制限が加わって急に引き下げられることで労働供給が資本に比べて過少になるからである。しかし、長期的には資本が蓄積されることで、総需要効果がない場合にはプレミアムフライデー実施前のレベルに戻っていく。総需要効果がある場合は、総需要(消費)の落ち込みにともなって、賃金も下降し、長期的には、2.2%低下することとなる。実質利子率は、同様に資本の過剰供給を反映して一時期低下するものの、長期的にはプレミアムフライデー実施前のレベル(あるいは総需要効果がある場合はその近く)に戻っていく。

基本的には、プレミアムフライデーを労働供給に制限を加えるものとしてとらえた場合、そのマクロ経済に与える効果は総じてマイナスであることが見て取れる。

では、前回見た「需要側」のモデルと今回見た「供給側」のモデルのどちらが現実的だろうか?何度かちょっと議論したけれども、無駄な時間(モデルでいえばラムダ)を強制的に減らす効果が、小さいとはいえ労働供給を制限するネガティブな効果よりは比較として大きいのではないかなという気がする。でも、効果はかなり小さいだろう。見えないくらいかもしれない。月末の金曜午後の労働時間が減る分は、他の日に長く働いてもらったりする可能性が高いと思われるからだ。それに、プレミアムフライデーの対象となる労働者はモデルの仮定(労働者全員)よりおそらくはかなり少ない。

モデルでは直接扱えない話だけれども、もしかすると、フルタイムの人の労働時間が少し減少することで、パートタイムの人の労働時間が増えたり、主にパートタイムの人の雇用が(ほんの少し)増えるというような効果もあるかもしれない。

あとは、プレミアムフライデーの趣旨の一つとして、月末の金曜日に早く退社できることで、週末の旅行を促進するというようなことが書いてあった。これによって特に恩恵を受ける業界の業績がどう変わるかなどを見るのは今後の楽しみである。

最後になるが、フランスでは、2000年に労働時間の上限を週39時間から35時間に削減したことが話題になった。このときにこの政策のマクロ経済や労働市場にに与える効果についていろいろな研究がなされたことを覚えている。プレミアムフライデーとはちょっと違うが、35時間労働が実施された後でフランスに何が起こったか、この効果だけを見るのは難しいだろうが、面白い研究を思い出したら触れようかと思う。

No comments:

Post a Comment