How to Analyze the Current Policy Options in Japan, Part 1

日本では衆議院が解散され、総選挙がおこなわれるようだ。今度の選挙の重要な争点のひとつとして挙がっているのは、消費税が2019年10月に現行の8%から10%に引き上げられる際、その使い道として、これまでは社会保障の安定化(政府の借金の返済と読み替えているところも多いがそれでよいのかな)だったものを、その一部を幼児教育無償化などに振り替えることらしい。そもそも消費税率が引き上げられた際の新たな収入の使い道について、国民から了承を得ていたとは考えづらいのだけれども、そういうことらしい。そもそも、僕は日本の細かい政策オプションに通じているわけではないので、間違いも多いと思うので、細かいことなど、いろいろ指摘してもらえるとうれしい。

というわけで、簡単なマクロ経済学のモデルを使って、このような政策変更の効果を分析できないかと考えてみた。とはいえ、今回は、その取っ掛かりの部分を紹介するだけである。まだ、どうすればよいかというのは見えてきていないので、うまく行かないかもしれないけれども、数回にわたって試行錯誤してみる。いつものように途中で投げ出してしまうかもしれない。

まず、どのような政策を分析しようとしているのかについて考えてみよう。国の借金返済というのは、言い換えれば、将来の年金受給の原資として使うともいえるのだろうか。今のままでは大幅に債務の額を増やさずに今計画されている年金受給額を維持できないのであれば、消費税の増税によって将来の年金受給額を(あまり)減らさずに済むようにできるかもしれない。但し、将来のどの時点の年金受給額の補填に使うかははっきりしていない。もしかしたらそういう計画も示されているのかもしれないが、僕はまだ見ていない。もしすぐ近くの将来の年金受給額の補填に使うというのであれば、いわゆる、現在年金に貢献している比較的若い世代からもう退職した世代への所得移転と捉えることができるかもしれないが、もし、かなり先の将来の年金受給額の補填に使うというのであれば、もしかしたら、現在年金に貢献している比較的若い世代も恩恵をこうむるのかもしれない。但し、将来の年金関連政策は、不確実性の高い将来の経済状況に左右されるだろうし、将来誰が政権についているかによって変わりうる物なので、現在の政権が信用できるレベルでコミットできるようなものではないことから、きちんと政策をモデルに取り込むのは難しいなと感じている。

では、幼児教育無償化の方はどうか。こちらの方は、単純化すれば、幼児を持っていて、かつ私立などに入れる予定ではない(慶応の幼稚園とかに子供を通わせる費用が補助されるとは思えない)、おそらくは比較的低所得で中年の家計への補助金と考えればよいであろう。

但し、原資は消費税率の2%引き上げである。消費税は、(累進性の高い)所得税とは違って、誰にでも比較的同じような税率でかかるものなので、多くの家計に比較的「平等に」負担が生じる。結局、増税と、その使い道を同時に考えてみると、以下のように分類できるのではないだろうか。

1. 現在および近い将来退職する世代にとっては、政策変更前は、消費税増税の負の効果と、年金受給額への補填の正の効果のどちらが大きいかというのが問題であった。彼らは幼児を抱えていないとすると、今回の政策変更で、年金受給額への補填が小さくなるので、彼らはおそらく損をすることとなる。

2. 現在幼児を持っていて、比較的低所得の家計にとっては、政策変更前の消費税増税の効果は、消費税増税の負の効果と、将来の年金受給額への補填を通じた正の効果の比較であった。政策変更後は、将来の年金受給額への補填がおそらくは減る一方、幼児教育無償化を通じた補助金が増えることになる。おそらくは後者の効果の方が大きい、つまりプラスであろう。

3. 幼児がいるものの、高所得の家計への効果は、政策変更前は、消費税増税の負の効果と将来の年金受給額への補填を通じた正の効果の比較であった。政策変更に伴って、後者の正の効果が弱まるので、これらの家計は損をすることになる。

4. この政策が続くと仮定すると、現在幼児がいなくても、将来幼児を持つ可能性のある家計についても上の議論が当てはまる。但し、若い家計であれば、年金受給額への補填効果は弱いだろう。

5. まだ退職してなくて、将来にわたって幼児を持たない家計にとっての政策の効果は、退職者のグループと同じである。但し、幼児教育への補助金を通じた正の効果はない一方、若い家計であれば年金受給額補填の効果も弱いと考えられるので、政策変更の効果はあまりないと考えられる。

予想外に長くなってきたので、今日はここでやめておく。次回は分析に使えるかもしれないモデルを組んでみようと思う。

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