Micro Pricing Facts and Sticky Information

前回の続きで、今回もKlenow and Willis (JME2007)について書く。

マイクロレベルの価格設定行動データの分析から得られた結果として、モノの価格は平均して6ヶ月に一度改定されていると前回書いた。カルボ価格設定を仮定した四半期が1期間のモデルで考えると、それぞれのモノの価格を決める企業はx=0.5の確率で価格改定をすることができることとなる。しかし、x=0.5ではモノの価格は頻繁に改定されすぎるので、モデルでは金融政策が弱い効果しか持たないことになることも前回書いた。

では、どうすればよいか。簡単な解決策は、企業が価格を改定するときには企業は必ずしも最近の情報に基づいて価格を改定しないと仮定すればよい。このような企業の価格改定行動を「合理的」(に見えるよう)にするために考案されたのが、Sticky information(SI)と、Rational Inattention(RI)である。SIはMankiw-Reisが開発した。モノの価格を決めるそれぞれの企業はカルボの妖精に頭を小突かれたときだけ最新の情報を収集する、という単純な仮定である。xに加えて、yという確率でWSJを読むと考えればよい。通常のカルボの妖精があらわれて価格改定することができたとしても、持っている情報は最新ではない場合、改定した価格は必ずしも最新の情報に基づいていないので、yが小さければ小さいほど金融政策の効果は大きくなるのである。もちろん、このアプローチは、アドホックな仮定を別のアドホックな仮定(しかも直接観察されないので前のものよりカリブレーションの際の自由度が高い)で置き換えただけなので、当然の発展として、yを内生化する(例えば、WSJを読むのにはコストがかかるので毎期毎期WSJを読んだりしない。いわゆるメニューコストの焼き直しである)方向に進んでいる。

RIはSimsが推し進めている。RIによると、人々は、いろいろな情報すべてに目を通しきれないので(Information Capacity Constraintと呼ばれる)どの情報により注意を払うか選択する。WSJは読むけど、限られた時間しかかないのでどこを読むか決めるのだ。重要な仮定は、より注意を払うほどその情報の精度が増す(情報のノイズが減少する)という点にある。そうすると、マクロの景気循環はマイクロレベルのショックの大きさに比べて小さい場合、各企業はマクロレベルの情報より自分の業界の情報により注意を払うこととなる。つまり、モノの価格を決める企業は「合理的に」マクロのデータの変化に注意を払わないこととなる。

どちらのアプローチも、エージェントがなぜ最新の情報を持たずに行動をするのかというのをモデル化しているという意味で、同じカテゴリーに含まれる。個人的には最初はどちらもRIと呼ばれていたような気がする(Mankiw-ReisのRIとSimsのRI)が間違っているかもしれない。今はSIとRIという呼び名が確立されている。SIはRIの簡略版と考えられていると思う。

ではKlenow-Willisに戻ろう。彼らのモデルは、SIとメニューコストを組み合わせたものである。各企業の持つ情報はyの確率でアップデートされる。各企業はいつでも価格改定ができるが、価格改定にはコストがかかるので(メニューコスト)、頻繁には価格改定はしない。更に、彼らは、各企業はそれぞれ固有の大きなショックにも直面しているので価格改定するときの幅はデータで見られるようにとても大きい。彼らのモデルは、(1)価格改定は比較的頻繁、(2)価格改定の幅は大きい、(3)価格改定の際には潜在的に利用可能なすべての情報が用いられているわけではない、というデータの特徴をモデルで再現することに成功した。

特に、彼らは、6000企業からなるモデルのシミュレーションとアメリカのデータを比較して、どちらにおいても、企業が価格を改定する際には、前回の価格改定以降に新たに利用可能になった情報だけでなく、前回の価格改定より前の情報も使われることを示した。

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