- 先進国においては政府支出とGDPは負の相関関係がある。相関係数の平均は-0.17である。つまり、先進国はいわゆる景気の動きを小さくすると思われる政策を実施している。
- 発展途上国においては逆に政府支出とGDPの相関は正である。相関係数の平均は0.35である。なぜか、発展途上国は景気の波を大きくする方向で財政政策を実施しているのである。
- いくつかの発展途上国においては、最近政府支出は正の相関から負の相関へ変化した。これらの国は発展途上国の財政政策を「卒業」したといえる。
- 発展途上国でなぜ政府支出が景気と同じ向きに動くのかについては、(1)国際金融市場へのアクセスが不十分(だから不景気には借りられない)、(2)政治的なプレッシャーによって好景気の時には財政支出を増やさざるを経ない、といった説明がなされている。
そこで、筆者らは、62カ国について、1960-2013年にわたる「平均的な税率」のデータセットを構築した。この「平均的な税率」は各国の法人所得税率、個人所得税率および消費税率(VAT)を組み合わせることで得られる。このデータセットを元に、税率とGDPの相関について調べたところ、以下のことがわかった。
- 税政策は先進国より発展途上国においてより大きく動く。発展途上国の税率は先進国のそれより35-100%変動幅が大きかった。この結果は、政府支出に関する結果と整合的である。発展途上国の政府支出の変動幅は先進国のものより60%高いという結果がある。
- 税政策は先進国においては景気と無相関(acyclical)で発展途上国のいては主に正の相関がある(procyclical)ことがわかった。
- 政府支出とGDPの正の相関が強い国ほど、GDPと税政策の正の相関も強いことがわかった。言い換えると、政府支出と税率は同じように動くということである。
- 政府支出の正の相関が強い国は「制度の質」(institutional quality、汚職の程度が低く官僚の質が高いと制度の質が良いといえる)が低いことがわかっているが、税率についても、制度の質が高い国ほど税率とGDPの正の相関が弱いことがわかった。
いわゆる経済学全体における流行である「独自のデータの構築・分析」が面白いトピックについてなされたペーパーである。
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