Unreasonable Evaluation?

数日前に「異次元緩和」、特にマイナスの政策金利について、否定的なポストを書いたばかりなのだが、巷では否定意見と肯定意見がぶつかり合うかと思いきや、否定的な意見の嵐である。その中には、勝ち馬に乗った、つまり、経済指標もあんまりいい感じには見えないし、否定的な意見が多いみたいだから、俺も否定的な意見になろうといっている人も多いと思う。僕は、これらの政策には依然として否定的だけれども、ここ数日のバッシングはあんまりではないかと思う。その理由を挙げてみる。
  1. 為替がマイナス金利の導入によって円高に動くとは考えにくい。実質金利が一般的に低下したり、銀行の利益にマイナスの影響が出ることが予想されたり、それによって実体経済にマイナスの影響が出ることは考えられるが、それらは全て円安の方向に為替を動かすと考えるのが自然である。円高に動いてしまったのは、よく巷で言われているのは、アメリカや欧州の景気拡張のペースに対する予測が下方修正されたこと、などが原因ではないかといわれている。これらについては日本銀行はどうしようもない。マイナス金利発表→円安→ダメな政策だ、なんてことはない。
  2. ちょっと皮肉っぽいい方になるが、為替が予想外に大きく動くおかげで、日本人の貯蓄が国内から出られないという面もあるので、わけのわからないことをやるという評判も役に立つのかもしれない。
  3. 株価も様々な要因によって動くので、タイミングがそれらしいからといって、マイナス金利の発表が(日本の)株安を生み出した、というような大雑把な議論をしてはいけないと思う。これもタイミングが悪かったという側面もあるだろうから、慎重な評価が必要だ。そもそも数日の株価の動きを気にするのは経済学者の仕事ではない。
  4. 銀行の利潤が圧迫されたり政策の不確実性が増すことによって貸し出しに慎重になるというチャンネルは十分に考えられるが、長期金利の低下によって住宅ローン等の貸出金利が下がるというチャンネルも十分考えられる。前者が強いのかというのも、まだ確証はない。実際に貸出金利が下がったか、貸し出しの姿勢に変化があったか、そしてそれらの変化は、マイナス金利によって影響を大きく受ける銀行と影響が小さい銀行の間で違いはあるか、というようなことを慎重に見ていかないといけないだろう。
  5. また、銀行の金融仲介機能がどう影響を受けるかという意味でも、タイミングが悪かった。ドイツの銀行のバランスシートの健全性について疑いが高まり、銀行一般のリスクスプレッドが上昇した時期になってしまった。もちろん、日本のマイナス金利政策の発表がそのチャンネルに拍車をかけたかもしれないので、これは内生的なもの(タイミングが悪かったといって片付けてはいけないもの)かもしれない。
  6.  まぁ、サプライズを重視するのなら、どこでサプライズをかけるかについても慎重にならなくちゃいけないんだろうが(そもそもそういう政策はまずいと思うが)、サプライズに頼ると、運が悪いとこういう風になってしまうという例にみえる。

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