Economist誌の最新号で、GDPの問題について特集が組まれていた。
昔から言われていることとして、GDPは厚生(幸福度)の指標としてそもそも問題がある。例えば、選択肢が広がることによる厚生の向上はGDPには反映されない。また、市場で取引されないもの(家庭で行う子育て)の価値はGDPには含まれない。サミュエルソンは、誰かがその人が雇っていたお手伝いさんと結婚するとGDPは減少するという(多分ちょっと不適切な)例を彼の教科書の古いバージョンで挙げていた。
それに加え、GDPにはそういう限界があるということは受け入れたとしても、そのGDPが把握しようとしているものすらきちんと把握できているかについても問題が大きくなってきている。その問題の源泉は、サービス産業の比率が高まっていることだ。GDPはもともとどのくらいモノの生産が可能かを図るために開発され、整備されてきたものであり、サービスの生産をうまく把握するのは難しいからだ。
まぁ、この話は常にされていることなんだけれども、GDPの改訂(revision)について面白いグラフが載っていたのでここに掲載する。
濃い青は、GDPの平均的な改訂の幅を示しており、薄い青は、改訂の「絶対値」の平均的な大きさを示している。濃い青について言えば、アメリカを除く全ての国はプラスになっている。つまり、平均的に、GDPの最初の速報値と3年後の値(確定値)と比べると、確定値のほうが高い傾向にあるということである。日本について言えば、大体確定値は速報値より0.1%くらい高いようだ。つまり平均的には速報値は悲観的だということになる。面白いのはアメリカで、速報値は最終的には下方修正される可能性が高い、つまり速報値は楽観的らしい。いかにもアメリカ的で面白い。
薄い青は、GDPの改訂幅の絶対値の平均を示している。言い換えれば、改訂の標準偏差を示していると考えればよい。面白い(というか面白くないが…)のは、日本の改訂幅がダントツに大きいということである。ほかの国は大体速報値と確定値の差は0.2%ほどなのであるが、日本だけは0.6%に近い。GDPの速報値が経済政策等に与える影響を考えるとこれはとても大きな問題だ。また、日本のGDPの速報値だけが特に早く公開される(つまり速報値を計算する際の情報が他国に比べて少ない)という話は聞いたことがないので、単純に考えれば、日本のGDPを計算する関係省庁の能力が足りないと考えることもできる。それにしても0.6%というのは大きい。ただし、この表の「GDP成長率」は年率換算なのか否か良くわからない。Economistの本文を読んでもわからなかった(この辺はきちっとして欲しいところだ)。例えば日本の最新(2015年第4四半期)のGDP成長率はマイナス前期比0.4%(年率換算でマイナス1.2%)だけれども、0.6%もずれれば四半期ベースだったらプラスに転じる可能性も十分にあり、年率換算でもマイナスの幅が半分になる可能性も十分あるということである。
日本のデータは使いにくいという問題があるが、使えたとしても改訂幅が大きいというような、先進国として恥ずかしい状況はぜひとも改善して欲しい。
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