ついでに、NPR(National Public Radio)のポッドキャストで最近聞いて面白かった話題について書いておく。このリンクがそのポッドキャストの関連情報である。フードバンクは、企業あるいは個人から食料の寄付を受け付けて、それらを食べるのに困っている人に配布している慈善団体である。食料の寄付を受け付けて配布するというのは教会もやっているが、教会と違って全国で展開しているので、あるフードバンクで余った食料を別のフードバンクに送るようなこともできる。
ここで問題となるのは、どのフードバンクが何を必要としているかについてのローカルの情報が全国で共有されていないので、どこに送っていいかよくわからなかったり、必要ないものを送ってしまうということが頻繁に起こることであった。NPRでは、生鮮食料品がほしいアラスカにピクルスが大量に送られてきて困ったという話や、(ジャガイモの有名な産地である)アイダホにジャガイモが送られてきたという話が紹介されていた。
解決策としては2つ考えられる。1つ目は、全国のフードバンクで必要としている食料のリストを中央で管理して、中央が配分を決めることである。1つ目は、これが経済学者の普通の反応だろうが、寄付された食料のマーケットを作ることである。フードバンクはマーケットを作る解決策を選び、なかなかうまくいっているようだ。フードバンクがマーケットを作るにあたっては、シカゴ大学ビジネススクールのCanice Prendergastらが協力したといっていた。
具体的には、各フードバンクは架空の通貨を渡され、その架空の通貨をeBayのようなオークションサイトで使うことができる。その架空の通貨の量は、それぞれのフードバンクがどのくらい食料が必要かに応じて配分される。フードバンクだけが参加するそのeBayのようなサイトにほしい食料が出品されていたら、その食料に対して架空の通貨でいくら払う気があるかを入力する。入札が締め切られると、その翌日に、誰が競り落としたかがわかる仕組みになっているようだ。このシステムの導入によって、アラスカでほしい生鮮食料品が手に入るようになったと紹介されていた。
詳細はポッドキャストではわからなかったが、こういう話を聞くと、フードバンクのマーケットの中でさやとり(arbitrage)をするフードバンクが出てきたりとか、フードバンクの外のマーケットとの間でさやとり(予想通り、フードバンクのマーケットでは賞味期間が短い生鮮食料品は価格が低く、シリアルなど長持ちするものは価格が高くなりがちのようだ)をするフードバンクが現れるのではなどと考えてしまうが、ポッドキャストを聞いた感じではそういう活動は起こっていないようだ。そもそも、転売がされていないように聞こえた(要確認)。ポッドキャストによると、そもそも、フードバンクに携わっている人たちは、とても利他的なので、多く買いすぎてしまったら近くのフードバンクにあげたり、あるいは架空通貨が足りなくて困っているフードバンクがあったら、何か寄付してあげたりしているようだ。参加者が少なくて皆が皆を知っていて、この通貨による全ての取引が記録されて(誰でも見られるようになっている)マーケットだと、こういうアレンジメントがかなりいい結果をもたらすという理論的な結果があるのかとかぜんぜんわからないけれども、こういう、経済学者が考える解決策にありがちな殺伐とした感じがなくて、うまく言っているという例を聞くととても気分がいい。
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