On Golf and Academia

あまり考えずに書いた、ちょっと軽い話を書く。
  1. 時々誰かがこういうことをTwitterでつぶやいているのを目にするけど、研究者というのはスポーツ選手と比べることもできる。スポーツといってもいろいろあるんだけれども、研究、特に経済学は、個人スポーツの色が濃く、国際化が進んでいるので、ゴルフやテニスとよく似ているなぁと思うことがある。
  2. ゴルフで考えてみると、どの国の出身でも世界のトップはアメリカやヨーロッパのツアーを一人で転戦している。まぁ、自分のチーム(研究者の場合家族)で回ることも多い。日本にもれっきとしたツアーが存在し、アジアのツアーやオーストラリアのツアーも存在する。どこを回って賞金を稼ぐかは自分しだいだ。アメリカのツアーに比べると日本のツアーの賞金は少ないけれども、日本の居心地の良さは捨てがたいというプロもいるのではないだろうか。家族のことを考えて海外ツアー転戦を止める人もいるだろう。
  3. 日本のツアーしか回っていなくても、日本でトップに立っていれば、アメリカのメジャーに出られたりする(少なくともゴルフではそうなんじゃなかったかな…)、これは、日本で活動していつつトップ5に載せることと似ている。時々アメリカや欧州に客員研究員として滞在するのは、アメリカや欧州のツアーにスポット参戦するのとほんのちょっと似ている。
  4. 優秀なプレーヤーは企業からお金をもらってプレイしたりする。帽子にロゴをつける代わりに、研究発表するときや論文が出版されたときに謝辞をつける。大学でChair Professorになったりするのも似た話だ。
  5. ゴルフと違うのは、一流のプレーヤーが腕を上げて人類の知識の境界を押し広げることが人類の役に立つと考えられており、政府(税金)で補助されていることである。たぶん、ノーベル賞をとるとまでは言わなくても、世界で最先端の研究をしている一流の研究者にお金を多く配分することで、ゴルフの腕の磨くインセンティブを高め、実際に一流のプレーヤーは有り余るお金を使ってその腕をさらに磨くことが望ましい。
  6. ツアーの賞金で生活できない人は、レッスンプロとなる。レッスンプロの需要も大きい。ツアーで上位にコンスタントに入れないような人は、たぶんレッスンプロとしてやっていくほうがお金は儲かるだろう。
  7. レッスンプロの比喩があっているなら、レッスンプロに補助金を支給してもあまりしょうがない。ツアーで食べていけない人であれば、レッスンで稼げばよいし、そういうレッスンプロに補助金を入れる必要はない。レッスンプロでも食っていけなければそもそもゴルフをしているほうが間違っているといえるだろう。
  8. ここで、また研究者(経済のことしか知らないので経済学に限るが)がゴルフのプロと異なるのは、研究者の場合、レッスンの意義もかなり高いと考えられていることである。アメリカや欧州のツアーを回っている一流のプロも(ツアーの合間に)レッスンをやっている。ゴルフと違って、いい弟子を育てることで、自分のゴルフの腕が上がったり、いい弟子はキャディになってもらうことで自分の成績を上げられたりする、と考えればよいだろうか。
  9. 但し、レッスンは、プレーヤー個人にとってメリットがあるというだけでなく、人類全体のゴルフの腕が上がることもいいことだという認識が共有されているのがゴルフとの大きな違いである。よって、それなりの質と数のレッスンプロが確保されていることも重要になってくるので、政府がゴルフスクールに対して補助金を投入することが一般的に支持されるようになる。
  10. さらに付け加えておくと、経済学の場合、一流のプロであっても、ちゃんとレッスンもしないといいプロと認められない(ので高い賞金が得られない)側面もある。
  11. このような比喩を元に考えてみると、重要な目標は、一流のゴルフプレーヤーの腕を上げてもらうことなので、特に政府の財政状況が切羽詰っている現状では、一流プレーヤーに傾斜的に大量の補助金を出すことは理にかなっている。特に、日本の場合、個々人の賞金(給料)の差が成績によってあまりつかないように見えるので、それを保管するという意味でも、傾斜の激しい配分が重要ではないかと思う。とはいえ、それなりの質のレッスンプロもある程度いないと困るので、レッスンプロやゴルフスクールには最低限の補助金を出さなければならないのも理にかなっているといえるであろう。
  12. あと2つゴルフとの違いをあげておこう。ひとつは、腕が落ちたシニアがなぜかツアーに居座り、補助金をもらっていたりすることであろう。一流のツアーで競争できないシニアはレッスンプロになってもらって、レッスンプロに見合った報酬にするのがいいのではと思われる。経済学ではシニアツアーの年齢でもバリバリ現役で活躍する人も多いが、補助金だけもらってツアーでぜんぜんいい成績を残していない人も多い。
  13. もうひとつは、ゴルフのレッスンの本を書いたり、レッスンあるいトーナメントの解説のためにテレビに出たりする人が、世界で活躍する(松山のような)プレーヤーより有名なんてことはゴルフではありえない(かなり有名なレッスンだけのプロもいるがそういう人はゴルフをやっている人(の一部)しか知らない)が、経済学では普通にあることである。一流のトーナメントで活躍する人たちが(彼らの時間を割かない形で)もっとマスコミなどにフィーチャーされるといいのだが。ノーベル賞をとったときだけ騒ぐのは、マスターズをとったときだけ騒ぐようなもので、なかなかある話ではない。

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