News Shock

ニュースショックというものがBusiness Cycle Theoryの分野で流行っているらしい。流行っているといっても重要なペーパーは90年代の半ば(Beaudry-Portier, JME1994)に出ているからもうかなりの期間流行っているのを見落としていただけなのかもしれない。日本人の研究者たちも重要な貢献をしているようだ。最近ではAERの巻頭まで飾っていた(Jaimovich-Rebelo)のでぱらぱら眺めてみたし、セミナーでも最近聞くことがあったので、頭の整理がてら少し書いてみる。基本的にはAERペーパーの受け売りである。

基本的なストーリーはかなり直感的なものだ。将来の生産性を高める技術革新が起こったというニュースが現れたとする。そうすると将来その技術が使えるときに備えて投資が活発になって、まだその技術革新が起きていなくてニュースが流れただけなのに投資が活発になって景気が上向くというものだ。

ただ、このロジックをRBCモデルに組み込むと、なかなかうまくいかないことが知られていた。大きな問題点は2つ。1つ目は、将来技術革新が起こるとなると、将来の生産=収入が増えることが予想される。そうすると、今の時点では消費を増やすことが予想される(いわゆるincome effect)。もし今の生産があまり増えないとすると、本来投資にまわされるべきresourceが消費に回ってしまい投資は落ち込んでしまうのだ。2つ目は、将来生産性があがることがよそうされると、今より将来働いたほうが生産性が高いので、今は余暇の時間を増やすincentiveがかかる。いわゆるintertempooral substitution of laborという効果だ。よって、消費は増えるけれども、労働時間は減るし、生産はもしかしたら落ち込む(労働時間が減るので)し、投資も減るという、踏んだり蹴ったりの結果となるのだ。

Jaimovich-Rebeloは、これらの問題点を克服したというのが主な貢献だと思われる。では、どうやったかというと、(1)投資が今から増えるように投資の調整コストを入れた。調整コストがあるといっぺんにたくさんの投資をするよりゆっくり長期にわたって投資をしたほうが安上がりになるので、ニュースがあれば今の時点から投資を増やすincentiveが生じる。(2)income effectが存在しないutility functionを使った(いわゆるGHHタイプと呼ばれるやつ)。これで、消費と余暇時間の増加を消すことができる。(3)資本のutilizationの程度を調整できるようにした(variable capital utilization)。これによって生産がニュースに強く反応するようになるとintroductionでは書いてあるけど、もっとちゃんと読まないとロジックはわからない。

普通のモデルで生じる問題点(counterfactual implications)を挙げて、それを克服する方法を提示するという、古きよきRBCのペーパーの雰囲気をかもし出す、シンプルで好感の持てるペーパーだ。

これからニュースショックがさらに流行るのだろうか。僕にはわからない。ただし、ある学会で聞いたコメントには共感を覚えた。TFPが何なのか僕らははっきりわかっていない。ニュースが何なのかも僕らはよくわかっていない。TFPのニュースというとよくわかってないものの2乗だ、というものである。ニュースショックというのはそもそも観察しにくいものだから、とても自由度が高そうなので、どのようにモデル化するかによってモデルの特性がずいぶん変わってくるとなると、いろいろ柔軟に説明できる=何も説明できない、ということになる危険性がある。

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