Rational Inattention Part-1

Rational Inattentionという理論がある。Hyperbolic discountingやHabitと並んで、一時的な流行で終わるだろうと思っていただのだけれどしぶとく残っていて、今でも時々ペーパーを見かける理論の一つだ。日本語になんのひねりもなく訳すと、「合理的不注意」になる。なんのひねりもなく説明すると、人々が合理的に不注意になることを選択する理論だ。昨今ブームの(個人的にはこれも流行で終わる確率が少なからずあると思う)行動経済学の一派として捉えている人もいるのかもしれない。

基本的な考え方は、何らかの理由で人はいつも周囲の情報に周囲を払いきれない、というものである。なぜこのような理論が重要なのか?スタンダードなマクロのモデルでは、家計は経済に関するあらゆる情報をもとに常に最善の決定を下すと仮定されている。ただ、その仮定の下で導き出されるimplicationsの中には現実にそぐわないものが見られる。じゃあ、スタンダードなモデルの仮定の何かがおかしいのだろうということでさまざまな改善方法が提案されてきているわけだが、Rational Inattentionもそのひとつと考えられる。

Rational Inattentionは、特に金融政策との関連で使われることも多い。なぜなら、金融政策が効果を持つ(Non-neutralityと呼ぶ)ためには、スタンダードなマクロの仮定の何かをくずさなければならないからだ。Rational Inattentionは金融政策に効果を持たせることができる仮定(で比較的もっともらしい)の一つなのである。

ただし、ここでは、Portfolio choiceを例として扱う。僕にとっては少なくとも、こっちの方がわかりやすい。Bill君がMicrosoftとAppleの株を持っているとする。スタンダードなモデルで想定されるBill君ならば、MicrosoftとAppleに関する情報をすべて勘案して、毎日株の売買をするはずなのだが、そんな人はあまりいない。何でだろう。売買にコストがかかる(Transaction cost)というのは一つの説明方法なんだけれども、ここでは取り扱わない。Bill君は、何かしらの理由で、MicrosoftとAppleに関する情報を常にアップデートしておけないからだ、というのがRational Inattentionである。一見すると、Bill君が合理的でない行動をとっているように見えるかもしれないけれども、本当は、Bill君は最善の情報に基づいて行動してだけないのである。実際、最善の情報に基づいていないケースと、最善の行動が取れないケース、をデータから識別するのは難しいと思う。

実際のモデル化の方法としては2つのメジャーな方法がある。Mankiw-Reis方式と、Sims方式だ。毎回一話完結にすると続かないので、次回からひとつずつ簡単に紹介する。

[11月11日に修正&大幅加筆]

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