The Economistの記事より。元になっている論文は多分読んでもわからないだろうから読んでいない。
飢餓など、自分の子孫の存続が危ぶまれる状況下では、女の赤ちゃんが生まれやすいことが知られている。男に比べて女を産んだほうが将来に子孫を残せる確率が高いので、母親の体が、女の赤ちゃんを産みやすいように自動的に調整されるという仮説が立てられている。特に、受胎の段階で飢餓などの状況に直面するとストレスに関連したホルモンが自動的に多く分泌され、このホルモンは男の赤ちゃんが発生する確率を低めるというのがそのメカニズムではないかと推測されていた。
UC BerkeleyのRalph Catalanoによる研究によると、必ずしもそのメカニズムだけが働いているわけではないようだ。彼は、データのそろった先進国では稀になった飢餓の代わりに、大量解雇(mass lay-off)を見ることにした。大量解雇によって生じるストレスは飢餓に匹敵するというのが彼の議論である。大量解雇に巻き込まれた(大量解雇に巻き込まれて失業保険給付(Unemployment Insurance Benefit)を申請した)女性が男の赤ちゃんを産む確率を、母親全体で男の赤ちゃんを産む確率とくらべると、前者の方が明らかに低いことを彼は発見した。極端な例では、母親全体では52.4%の赤ちゃんが男である一方(普通男の子の赤ちゃんの方が生まれる確率が高い)、大量解雇が多かった月は男の赤ちゃんの割合が51.2%まで下がった月も見られた。
彼の発見でもうひとつ面白いのは、男の赤ちゃんが生まれる確率の自動調整は、受胎のずっと後でも起こるということである。従来の理論に従えば、受胎から大幅に時間のたった母親は、大量解雇に巻き込まれようが男の赤ちゃんを産む確率が下がることはありえないのだけれども、データでは受胎から大幅に時間のたった母親でも同じ傾向が見られるのである。
では、どういうメカニズムが働いているのだろう。考えられるのは、性の自動調整を実現するためのメカニズムはひとつではないということである。ストレスに直面している母親は、女より男を流産する確率が高まるということが考えられる(女の胎児の方が母親にかかるストレスに強いとも解釈できるだろう)。彼の次の研究のステップは、流産に関連すると見られるホルモンがストレスの変化によってどのように変化するかを計測することのようだ。
過去10年程の日本では女の赤ちゃんが増えているだろうか?
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