How to Finance Reconstruction after the Earthquake?

東日本大震災について、何かか書けることはないかと考えつづけていたところ復興のための資金をどのようにファイナンスするかという話をそこかしこで読んだ。特に、小峰さんという方が日経ビジネスに最近書いた記事は(2ページ目以降は登録しなければならないので読んでいない)とてもわかりやすく書かれていた。今回のエントリーはこの記事(の1ページ目)に触発されたものである。小峰さんの議論とぶつかる書き方をしているが、総論として反対しているわけではないと最初に書いておきたい。

まずは、恥ずかしながら、日本の財政状況についての知識があまりに乏しいので、データを眺めてみた。そのままの専門用語を使って整理するとわかりにくいので、普通の家庭に置き換えて財政状況を把握するところからはじめてみる。金額もそのまま書くと大きすぎて僕のような頭ではうまく把握できないので、一般家庭の数字に近くなるように適当な数(1千万)で割っておく。

日本政府を一家庭と考えてみよう。2011年度の収入(税収が主である)は480万円である。利払いとかを除いた支出は710万円を予定している。710万年の支出とはいえ、そのうち290万円は同居する親の世話(社会保障費)に使うことになっている。その分を差し引くと自分の家族に使う支出(支出ー社会保障費)は420万円しかない。それに加えて今借りているローンの利払いが100万円、借り替えなければならないローンが110万円ある。合計すると総支出は920万円(710+100+110)である。とてもじゃないけど、480万円の収入ではどうしようもないので440万円を新たに借り入れる予定にしている。収入と同じ額を借りるなんてものは通常の家庭じゃあ考えられない。政府でも考えられない状況ともいえるが、このことは今回の趣旨ではないので特にこれ以上掘り下げない。

これまで借り入ればかりしていたので、ローンの残高が8920万円(長期債務残高)も残っている。今年の収入の大体20倍である。この数字も一般家庭ではありえないとんでもない数字である。一方、日本の場合、この債務のかなり多くが国内で保有されているという側面もあって、この数字をどのように解釈してよいかという問題点もあるのだが、今回のエントリーの趣旨ではないのでこれ以上は深入りしない。借金が大量にある一方、将来子供を大学に通わせるための資金(College Fund)として1270万円を貯金してある(厚生・国民年金積立金残高)。

このような状況下、急に大怪我をした(東関東大震災)としよう。治療のためには今年と来年で200万円は必要とのことである(20兆円という数字は小峰さんの記事から借用させてもらった)。とはいえ、とりあえずの応急措置として、40万円が必要とのことなので、急いでお金を工面することにした。とりあえずは、15万円は支出の切りつめ(無駄に高いハワイ旅行を計画していたがあきらめた)で、残りの25万円は、子供の大学用の資金を取り崩してまかなうことにした(40兆円の第1次補正予算)。

これが、東日本大震災後の状況を一般家庭に置き換えて表現してみたものである。では、2011年度の収入の約半分にも上る200万円をどうやってファイナンスすればよいであろう。一般論として、以下の4つのオプションがある。

(1)支出を切り詰める
(2)収入を増やす(増税。一般家庭では増やそうと思っても簡単に増やせるわけではないので、一般家庭に置き換えるとちょっと無理があるかもしれないが政府には可能である)
(3)借り入れを増やす
(4)子供の大学用の資金をさらに切り崩す

実際、大学用の資金(年金積立金残高)の約1/6を使うだけで復興用の資金(200万円)はファイナンスできることに僕は驚いた。おそらくは年金基金は少なくない割合を国債で運用しているであろうから、年金基金の取り崩しは市中に出回る国債を増やすという意味で、国債の増発と変わらないような気がする。メリットは、たいした話ではないが、「国債増発」に比べて、見た目があまり悪くないということだろうか。

借り入れの残高に比べると、復興用に必要な資金はたったの0.4%である。だからといって国債を増発して全然問題ないという議論につなげる気はないが、現時点での借り入れ残高に比べればとても小さいし、社会保障費のような長期的に続く支出ではなくて、1回きりの特別なケースであるということを書いておきたい。

デメリットはなんだろう。せっかく子供の大学のためにためておいたお金(将来の年金支払いのための資金)がなくなってしまうということもできるが、お金に色はない。所詮は貯蓄を切り崩すかローンを増やすかという違いなので根本的には違いはないといえる。「子供の大学用」とちゃんと用途を決めてお金を別にしておくことで、そのお金を通常の支出には使えなくし、無駄使いを抑制する規律になるという議論もできると思う。年金のために取っておいたお金を使うなんてとんでもない、と感じたり、主張したりする人の頭にあるのはこの議論だと思う。このような議論に対しては、日本政府の規律をそんなに信用できるか、と問いたい。

それに、ちょっと逆説的な議論に聞こえるかもしれないが、年金基金の残高なんてものは早くなくなるに越したことはないとも言える。年金基金の残高がどのように推移するかの予測は最近見たことはないが(「信用できる」数字はどこをさがせばよいのか誰か教えてほしい)例えば現時点で40歳より若いような人が年金を受け取るときには、この積立金はおそらくなくなっている。どうせ若い人は手にできないんだから、早めに問題を顕在化させて、なるべく「受け逃げ」できる世代を減らして、多くの世代で問題を共有させた方がよいとも言えるのではないか。

とても大雑把な議論で、かつデータにも詳しくない身なので、コメント等大歓迎したい。

1 comments:

ssiakhr said...

BarroのDisaster関連はどうでしょう?

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