EconomistのEconomics FocusがFree Exchangeに変わって経済学に関するトピックの頻度が下がってがっかりしていたのだけれども、久しぶりに、最近話題の経済学のペーパーを取り上げるという、Economics Focus時代のスピリットを感じさせる記事があった。Kroft, Lange, and Notowidgdoによる最近のQJE論文、"Duration Dependence and Labor Market Conditions: Evidence from a Field Experiment"だ。
この論文は何をやったかというと、求人を出している企業に履歴書を送ったときに企業からコンタクトされる確率(コールバック確率)が失業期間によって異なるかを調べるために、失業期間以外はかなり似ている架空の履歴書を全国のたくさんの企業に送り、どの履歴書が企業からコンタクトされるかを調べたというものである。研究の内容以前に、架空の履歴書に書かれたそれぞれの電話番号をどのように手配したのかとか、そもそもこんなことやっていいのかなとかという方が気になっていた論文である。
もとの論文のグラフよりEconomistのグラフの方がきれいなのでそこから拝借する。平均的には、失業期間が8ヶ月までの間は、失業期間が短ければ短いほど企業からコールバック確率が高いことがわかった。いわゆる"Negative Duration Dependence"という現象が確認された。8ヶ月でコールバック確率が半分くらいになるというのはとても大きい。8ヶ月を過ぎると、コールバック確率はほとんど一定となる。更に、コールバック確率の低下は、失業率が低い年ほど大きいこともわかった。失業率が低いということは、労働市場がタイトということで、よい人材は失業者として残っている確率が低いから、失業期間が長い人は何らかの問題があると解釈されやすいというストーリーと整合的だ。逆に、失業率が高い状況下では、いろんな人が失業しているだろうし、能力のある人が不運によって長い期間失業していることもしばしば起こりうるので、失業期間のシグナルとしての役割は弱まると解釈できる。
Economist誌は、この結果をHerd Behavior (すべての企業が、他の企業が採用していないんだからたいしたことがないんだろうと判断してしまう結果、実際の能力に関わらず失業期間が長いというだけの理由で職が見つけづらくなる)と解釈しようとしているようだけれども、必ずしもここに非効率性があるとは限らないだろう。失業期間が長い人は実際に相対的に能力が低いから、失業期間の長さに応じてコールバック確率が下がることに問題はないと解釈しても何の問題もない。
日本で言えば、高校や大学卒業時の4月に就職し損ねると就職が難しくなるというような 現象が(実際に存在するとすれば)関連が深い。これも、このようなアレンジメントによって生み出される結果が効率的か否かを見極めるのは難しそうだが。多分そういう研究も進んでいるのだろう。機会があったら学んでみたい。
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