How to Justify Invisible Benefits/Costs?

雑感エントリを一つ。

普通の日本人が経済政策についてどのように考えているかはよくわからないのだけれども、twitterを時々眺めるとがっかりすることが多い。5分くらいパラパラ眺めてみたところ、以下のような政策を支持している人がとても多いようだ。
  1. とことん金融緩和。
  2. とことん財政支出拡大。
  3. 消費税増税反対(あるいは時期を遅らすべし)。
  4. 社会保険をより充実させるべし。
このような政策は、基本的には、政策の長期的な影響、ダウンサイドリスク、あるいはインセンティブへの影響、を無視した場合に支持しやすい政策である。例えば、IS-LMモデルを使って、現在の日本は「潜在的GDP」を下回っていると考えれば、1とか2とかいった政策は自然と出てくることになる。

一方、これらの政策に反対あるいは慎重になる根拠を探すことも簡単である。
  1. 現在の日本の状況においてそもそも金融政策は有効なのか?インフレ率が上昇し始めた場合にコントロールできるのか?
  2. 財政政策がどのくらい有効なのかもわからないまま拡大を続けた挙句、(多くが国内で保有されているとはいえ)先進国でダントツの国家債務/GDP比がどんどん上がっていってしまって、いずれリスクプレミアムが上昇し始め、返済できなくなるリスクは怖くないのか?
  3. 消費税は価格のゆがみという観点からは非常に優れた税制だから、できるだけ所得税を上げずに消費税を上げていくべき。所得税を上げたことで景気に強い影響を与えるという証拠はあるのか?
  4. 一般的には社会保険を充実させればさせるほどモラルハザードの問題が深刻化する。
もちろん、いろいろな効果を慎重に比較した結果、最初にあげたような政策を支持するに至ることは十分にありうる。但し、後半で上げたようなことを真剣に考えずに、最初にあげたような政策を支持しているように見える人はとてもじゃないけど、信用できない。特に、経済学者であればなおさらだ。

その一方、最初にあげたような政策の効果は比較的わかりやすいし目に見えやすい(見えていると思わさせることが多い)一方、後半で上げたような効果は計測しにくい。長期的効果を統一的に分析するために動学化され、ダウンサイドリスクを分析するために確率化され、インセンティブへの効果を統一的に分析するためにミクロ経済学と融合してきたマクロ経済学だけれども、目に見えにくい効果の大きさについて説得力のある議論がなされてきたかというと、努力が足りないのかもしれない。もう一つ加えるならば、(特にNK-)DSGEモデルは、長期的効果や、ダウンサイドリスクや、インセンティブに与える効果を分析しずらいものにしているという意味で、マクロ経済学を昔に逆行させている面もあると思う。

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