Life-Cycle of Nobel Laureates

ちょっとは肩の力の抜けたものを書いてみる。

David Galensonは、さまざまな分野のアーティストが人生のどの段階で最も評価される作品を生み出すかを調べ続けていることで有名である。彼は、これまで、さまざまな芸術の分野において、ひらめきで勝負する「概念的なイノベーター」(最も典型的な例はピカソ)はキャリアの早い時期に最も評価の高い作品を生み出す一方、「実験的なイノベーター」(典型的な例はセザンヌ)は自分の技法を極めたキャリアの末期に最も評価される作品を生み出すことを示した。

今回紹介するペーパー(Creative Careers: The Life Cycles of Nobel Laureates in Economics)では、GalensonはBruce Weinbergとともに、経済学者、特にノーベル賞受賞者に焦点を当てて同じような分析をしてみた。

彼らは1926年以降に生まれたノーベル経済学賞受賞者で主に英語で論文を書いたものを分析の対象とした(よってAllais, Kantorovich, Koopmans, Seltenは含まれない。特に、論文のフットノートによると、Koopmansの最もcitationが多い論文がドイツ語で書かれた物理学の論文らしい)。まずは、経済学者のタイプを分類するために以下のような方法を用いた。
  • 論文の中で具体的な場所・時期・産業・商品に言及している回数が多ければ多いほどその学者は実験的なイノベーターである。
  • 論文の中に証明、仮定、公理、補題、定理、数式が多ければ多いほどその学者は概念的なイノベーターである。
これらの方法を元にノーベル経済学賞受賞者を分類した結果が以下のものである。
明らかだとは思うが、数字が小さいのが「実験的なイノベーター」(もっとも極端のはNorth, Fogel)で数字の大きいのが「概念的なイノベーター」(極端なのはMarkowitz, Debreu)である。まぁ、大まかに言って、実証系と理論系といっても差し支えないだろう。

彼らは、次に、個々のノーベル賞受賞者が最も引用される論文を生み出した年はいつごろか、その年(生産性のピーク)は経済学者のタイプによって異なるか、を分析した。下のグラフが、最も極端な「実験的なイノベーター」の生産性のピークを表している。
 丸で飾られた線は、それぞれの学者の平均的な引用数を2平均偏差以上上回る引用数を生み出す年の確率分布を示している。四角で飾られた線は、それぞれの経済学者の、引用数で見て最も生産的だった年の分布を示している。どちらの方法を用いても、「実験的なイノベーター」(実証系)のノーベル賞受賞者の生産性のピークは50代後半であることがわかる。では「概念的なイノベーター」(理論系)はどうだろうか。下のグラフを見てほしい。
 「概念的なイノベーター」(理論系)の生産性のピーク(最も引用される論文を書いた年)は20台半ばから終わりごろだというのがわかるであろう。

この論文のイントロでは、Larry Summersがハーバード学長だったときに、54歳の学者のテニュアを、「死火山」はいらないといって否決したという話が出ている。この話は極端な例だけれども、目的の異なる大学がどのような学者を雇うかを決める際に、このような傾向も頭においていてもよいのではないだろうか。

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