On Regressivity of Consumption Tax

消費税の逆進性というのが話題になっていた。定率の消費税だとすると、消費の金額に対して、消費税学の比率は一定(消費額x消費税率)である。しかし、所得に対しての消費税支払額の比率を考えると、高所得者ほど所得のうち貯蓄に回す比率が高い(つまり、消費に回す比率が低い)ので、ある年の消費税支払額を同じ年の所得で割ると、その比率は所得が高い人ほど小さくなる。このことを逆進性というようだ。

この議論に対して、貯蓄した分はいつか消費するのだから、現在の所得と消費税支払額だけを見た逆進性には意味がないという議論がある。貯蓄というのは、将来退職後に所得が低くなったときに所得を補完するため(ライフサイクル動機)であったり、将来失業するなどして所得が低くなったときに所得を補填するため(予備的動機)にするのであるから、それらの将来に、所得に対する消費の比率が上昇した結果、所得に対して消費税支払額が上昇することも考えなければおかしいという議論である。

(*)もう少し具体的に言えば、所得を使い残すことがないと仮定すると、生涯全体で見た消費税の支払額(これは生涯全体の消費額に消費税率をかけたものだ)を生涯全体の所得額で割れば、みな同じ比率である、つまり、消費税には生涯全体で見れば逆進性も累進性(逆進性の逆)もないということになる。つまり、消費税というのは(みな同じ税率という意味で)「公平」な税なのである。

この議論に対して、さらに批判があるようなので、ちょっとだけコメントしてみたい。昨日、このサイトに書かれていた記事にコメントをつける形で書こうかと思っていたのだが、 そのエントリがなくなっていたので、つれづれとコメントを書く形式にする。

  1. 所得が高い人は、所得を使い残す、つまり遺産を残すことが多いので、上の(*)の議論は成り立たないという議論がある。しかし、マクロ全体で見れば、全国民の資産額は比較的安定している。つまり、、遺産を残す人もいれば、残すよりも遺産を受け取る側の人もいる。遺産の受け取り総額と遺産の総額はマクロで見れば同じような数字になっているはずである。個人のレベルでは、遺産を多く受け取った結果、生涯収入より生涯支出の方が多いパリスヒルトン型の「お金持ち」と、遺産受け取りは多くなかったけど収入が多かったので、遺産を多く残した結果、生涯収入より生涯消費が少なくなるビルゲイツ型の「お金持ち」がいる。もちろん、ビルゲイツ型は消費税の支払い比率が平均的な人より低いのであるが、同時にパリスヒルトン型の人が高い消費税率を支払っていることも見過ごしてはならない。ここからは価値判断になるが、個人的には、ビルゲイツ型(パリスヒルトン型)の人の消費税負担比率が低い(高い)というのは、労働のインセンティブという面から見ても、そんなに悪いことではないと思う。
  2. 極端なことを言えば、普通の人や、ビルゲイツ型の人、パリスヒルトン型の人(あるいはその子孫)が将来ほかのタイプになる可能性がある状況で、消費税の負担比率をそれぞれの家系(ダイナスティ)で計算すると、どの家計も長いスパンで見れば消費税負担比率は同じようになるということもできる。
  3. 言い方を変えると、ビルゲイツ型の人の消費税負担比率が低い(消費税は逆進的だ!)と文句を言っている人が多いというのは、そもそも、自分(あるいは自分が気にかける子孫等)が結構な遺産を残せるほどの金持ちにならないと信じているということであり、それは残念というか、そのこと自体も大きな問題であろう。
  4. 消費税が優れているのは、(特に生産の)インセンティブをゆがめないこと、景気の変動に対して安定して税収入が得られるということである。所得格差が問題だというのであれば、それは累進的所得税や社会保障制度の充実で対処すればいいのである(そういう意味で、消費税に軽減税率を導入するのは個人的には反対である)。所得が少ない人への所得移転の重要性はもちろん認めるが、どの政策をとっても、低所得者に不利だという視点を持ち出したり、低所得者への配慮とかを考えなければいけないというのは、ばかげていると思う。所得移転はそれに特化した政策で実施しないと、インセンティブや価格のシグナルをいろいろな形でゆがめ、かつ結局誰がどのくらい恩恵を受けているのかわけがわからなくなる。このことは日本だけはなくアメリカやその他の国の問題でもある。

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