- これは経済学の議論ではないけれども、正直言って、消費税引き上げがまだ凍結されてないことに驚いている。これまで散々、消費税を上げるのは不人気だと思い知らされてきたのにだ。もし僕が今現在の人気だけ気にする政治家であれば、消費税の再度引き上げは絶対に阻止するとか言いたくなると思う。もしかしたら、ブログやツイッターとかで見かけるほどには反対意見が強くないのかもしれない。あるいは、政府は、近い将来のデフォルトの危険性を真剣に憂慮しているのかもしれない。いづれにしても驚きだ。
- 経済成長率が予想より減速しているから、今は消費税を再度引き上げるのにいい時期ではない、景気が回復してから引き上げようという意見をよくみる。だが、消費税率を上げる最適な時期に関する理論があるのか?おそらくは消費税を上げることで現在の消費者から将来の消費者へ所得移転を行うことになるので、(NK的なdemand-side effectがあると考えれば)いつ上げようが、GDP成長率は減速する。予想より原則が激しかったか緩やかだったかなんてのはbig pictureを考えれば大した話ではない。失業率だってそんなに悪くはない。景気が比較的よいときに引き上げる方が社会厚生の面で優れているという理論があるなら知りたい。景気の悪いときには消費税引き上げの(負の)効果がamplifyされるようなモデルがあれば面白いのだけれどもそういうモデルも見たことがない。
- 特に、消費者のheterogeneityがあってborrowing constraintに引っかかった消費者がいるようなモデルを作れば、borrowing constraintに引っかかっている消費者が少ないときの方が消費税引き上げによる悪影響は小さいという結果が得られる(よって消費税引き上げの「最適な」タイミングについて議論できる)だろうが、NK-DSGEモデルのような、完備市場のモデルではそういう議論はできない。アドホックにhand-to-mouth型の消費者が一定数いるモデルを作ればそういう効果は出せるがhand-to-mouth型の消費者の数が外生的に決まるようなモデルでは面白くもなんともない。
- そもそも、消費税を引き上げて財政状況を改善しようというのは長期的な視野に基づいた話で、短期的にGDPが上がった下がったなどという話と比べるようなものなのかという感じがする。目先のGDPの動きにとらわれないで、長期的に社会保障制度が維持できるようにするために消費税を引き上げさせてもらいます。短期的には可処分所得が減って申し訳ありませんが、将来のために我慢してください、という議論で押し切れないものか?
- それに、財政の引き締めを実施せずに、金融政策の緩和だけを行って、経済成長率が安定的に上昇することが期待できるのか?金融政策にできる(かもしれない)のは、短期的な経済成長率の変動を抑えることだけで、ものすごい成長を引き起こすことではない。過去15年も比較的低成長が続いているのであれば(このことも議論の余地があるが)、金融政策を動かしたくらいではその状況からはあまり劇的に改善しないような気がする。
- 将来的な経済成長率のトレンドを引き上げようという場合には、 どちらかというと労働市場などの規制緩和や人的資本蓄積のスピードを高める方が常套手段だと思う(もちろんこのような政策の効果は明らかでなく、あったとしても時間がかかるので見えずらいと思う)が、そういうことを本腰を入れて取り組む様子は見えない。労働市場などの規制緩和といったrealな政策を実施せずに、nominalな政策だけで、GDP成長率が回復するのを待っていたら、いつまでたっても「消費税を上げる最適なタイミング」は訪れないのではないかと心配になってしまう。ちょっとGDP成長率が上がったくらいでは、景気の腰を折るから、とかいうこれまたわけのわからない議論で、消費税率引き上げは見送られそうだ。
(More) Random Thoughts on Consumption Tax
あまり考えずに、消費税に関する議論で気になることをつらつらと書いておく。
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