- Neoclassical:そもそも金融政策はGDPが一時的にpotentialを下回っていときにそれを短期的にpotentialに近づけることくらいしかできない。日本の状況は、短期的にGDPをpotentialを下回っているというようなのんきな状況ではないので、どのような金融緩和をしても効果が限定的なのは当然。この場合は、短期の国債を買おうが長期の国債を買おうが関係ない。Forward guidanceも効果なし。
- Liquidity Trap:名目金利がゼロなんだから国債を買ってマネタリーベースを増やそうが、日銀と商業銀行の帳簿上以外の効果がないのは当然。この解釈ならば、(長期国債を買ったりForward guidanceを使って)ゼロでない金利(長期金利や将来の金利)を動かせば実質的な効果があるかもしれない。
多分、金融政策に関わる人の間で一番スタンダードな考え方はNew Keynesian ModelにLiquidity Trapを組みあわせたものだと思う。名目価格はStickyなので一般的には金融政策は実質経済に影響を与えうるんだけれども、Liquidity Trapのせいで、伝統的な金融政策の効果が発揮しづらくなっているというものだ。
Cochraneはこれとは違った、Fisherian Theoryを考えているようだ(余談だけれども、人の名前しかついていない理論というのは胡散臭いといつも考えているのだけれども、今回は例外としておく)。彼の議論は、有名なPeril of Taylor Rulesと関連している。この理論では以下のフィッシャー方程式を重視する。
- 名目金利=実質金利+期待インフレ率
この議論は普通のNew Keynesianのロジックとぜんぜんちがう。大きな違いは、New Keynesian Modelでは、 名目金利を引き上げると、価格の硬直性と需要サイドの効果によって、実質金利も上がってしまうということである。実質金利が上がると消費(といわゆる経済の総需要)が減少することになる。名目金利の引き上げはGDPの減少を引き起こす。
では、このような違いは何で生み出されるのか?Cochraneの新しいペーパー(Monetary Policy with Interest on Reserves)は(読んではいないけれども)その違いを説明することが目的のひとつであるようだ。彼は、New Keynesian Modelでは、政策金利が変更されると、自動的に財政政策も実施されることが暗に仮定されており、その仮定をはずすとFisherian Theoryと整合的なモデルとなるとブログで議論しているが、読む時間がないのでこれ以上は踏み込まない。学会では見たことがないけれどもブログで活発に金融政策について語っている人たちがいろいろコメントしているようなので、いつものようにhimaginaryさんがいつか整理してくれると期待している。
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