Theory of Default Contagion

Euro Zoneの周辺国(ギリシャ、アイルランド、スペイン、イタリア)の政府がデフォルトする可能性が同時に高まったことは記憶に新しいと思うが、政府がデフォルトするときにはいくつもの政府が同時にデフォルトすることが多いことが知られている。このようなデータの特性はどうやったら説明できるであろうか?すぐに思いつく説明は以下のようなものだろう。
  •  多くの国を襲うショックは何らかの理由で相関している。ある国が不況におちいると他の国も不況に陥ることが多い(correlated shocks)。
  • 上のことと関連しているが、ある国がトラブルに陥ることでその国と近い関係にある他の国の状況について投資家は学ぶことがあるかもしれない(learning)。
  •  ヨーロッパにおいて顕著だが、多くの国は同じ政策を実施していたりする。アジア通貨危機の前も、多くのアジアの国々が短期の外貨建て融資を増やしていた。その共通する政策が危機を引き起こすとすると、同時にいくつかの国が危機に陥ることになる(common policy)。
 Arellano and Baiによるペーパー(Linkage across Sovereign Debt Markets)では、新しい理論を提案する。その理論は以下のようなものである。
  • いくつかの政府が同じ政府(あるいは同じ国の銀行)から借りていて、借り入れ政府が貸し手と同時に交渉する場合、ある借り手がデフォルトした時には他の政府もデフォルトするインセンティブが高まる。その結果、デフォルトが起こる際には多くの政府が同時にデフォルトすることになる。
なぜ上で挙げたようなリンクが起こるのか。ドイツがスペインとギリシャに貸しているとしよう。ギリシャがたくさん借りてしまって、ドイツに対する債務のデフォルトを考えているとしよう。ギリシャがデフォルトすると貸し手であるドイツの消費は落ち込むことになる。返済されると見込んでいたローンが帰ってこない分、消費が少なくなるからである。このような状況下で、スペインにもデフォルトされると、ドイツの消費はさらに落ち込むことになる。よって、ドイツの交渉力が弱まるのである。この状況でスペインとドイツがデフォルト後いくら返済するかという交渉を行うと(交渉の結果はNash bargainingで決まると仮定されている)、ドイツの交渉力が弱い分、デフォルト後に返さなければならない金額は少なくなり、スペインはデフォルトするインセンティブが高まることになる。別の言い方をすると、ギリシャとスペインは同時にデフォルトした方が、デフォルト後に返済しなければならない金額が小さくなるので、デフォルトを同時に行うことが最適となるのである。よって、このようなモデルをシミュレートすると、同時にデフォルトする頻度が高いという結果になる。

ここ10年くらい、政府のデフォルトのモデルは発展してきているが、複数の国がデフォルトするモデルを作ったのは彼らがはじめてである。しかも、strategic complementarityがあるのが面白い。

理論的には面白いが、いろいろ問題がある。
  • スペインやギリシャの政府債務がドイツの人々の消費に影響を与えるか?ギリシャなんてのはドイツから見たらとっても小さい国である。
  • 上の点と関連するが、スペインとギリシャが同時に交渉することで交渉能力を高めているという直接的な証拠はない。
  •  最初にあげたストーリー、特にcorrelated shockで、多くの国が同時にデフォルトするという状況は生み出せるはずだが、彼らのモデルでは、スペインとギリシャのショックは相関していないと仮定されている。
理論としては面白いし、複数の政府のデフォルトのモデルを構築したという意味で貢献はあるのだが、あんまり重要じゃないだろうなぁ、と思われるチャンネルを提案しているペーパーだと思う。このようなペーパーがどこに行くのか、興味津々である。いろいろなところに招待されて発表されているペーパーなので結局いいところにいくのだろう。

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