Hayek vs Keynes on the Recovery Path

個人的にはKeynesがどういったとか、Hayekがどういったとか言う話には興味がない。もちろん彼らのような偉大なthinkerが考えてたことから学ぶことはとても多いのだけれども、経済学ではなく、解釈学のようになっているケースを良くみるので、KeynesとかHayekとかいう言葉をタイトルで見るとそれだけで引いてしまうのだけれども、きちんとした経済学者のペーパーならまぁしょうがない。

最近聞いた、Beaudry, Galizia, and Portierの"Reconciling Hayek's and Keynes' View of Recessions"についてちょっとメモしておく。Beaudry and PortierといえばNews Shockの先駆けとなったペアで、ちょっと人と違うモデルを使っておもしろいメカニズムを提案するのがうまい人たちである。

詳細は込み入っているので立ち入らないが、大まかなところは目新しいものではない。何らかの理由で家や生産のための資本が過剰に蓄積されてしまった状況を考えてみよう。不況というのは、このような状況で過剰に積み上げられてしまった資本を減らすために、生産が減速している状況であることも多い。アメリカで2007年末から起こったGreat Recessionは住宅ブームで過剰に家が蓄積されてしまったと考えることもできるだろう。このような状況で政府(あるいは中央銀行)は何をすべきか?

Hayekの見方というのは、過剰な資本が蓄積されてしまって非効率な状況が生まれているのだから、早く過剰な資本という状況を脱して通常の状況に戻るのが好ましいというものである。よって、政府は、資本の過剰蓄積を解消する民間の活動をそのままにしておいて、不況に対して介入すべきではない。逆に、Keynesの見方というのは、不況というのは需要が縮小している状況なのだから、政府が積極的に需給ギャップを埋める政策を取るべきだというというものである。これらの見方はしばしば対立するが、果たしてこれらは常に対立しているのであろうか?このペーパーは、これら二つの見方を包摂するモデルを作り、これら二つの見方の間のトレードオフを明示的に分析したというのが売りである。

非常に簡単にモデルの特徴を説明すると以下のようなものである。経済が資本を蓄積しすぎた状況を想定してみよう。ここでは、どうしてこのような状況にいってしまったかは問題としない。資本の過剰蓄積を解消するために、生産を低下させ、経済を効率的な状況(資本の過剰が存在しない状況)に早く戻すということのメリットは明らかに存在する。その一方、生産が低下するためには、企業は雇用を縮小しなければならない。すると、個々の労働者にとっては、働いている企業から解雇されるリスクが上昇し、あるいは失業した時に新しい職を見つけられる確率が低下する。このような状況で労働者は何を行うか?できることの一つは、消費を控え、貯蓄を増やして、失業に備えるということである。いわゆるPrecautionary savingだ。もし、このような行動による消費の減少が、企業の生産を更に減速させ、失業のリスクを更に高め、再就職を更に難しいものにすると、経済は負のスパイラルに陥ることになる。いわゆる「Paradox of Thrift」である。このような状況では、経済は最適な資本の水準に戻るために生産を低下させているものの、生産の低下が逆に別の面の非効率(非効率なレベルの失業)を生み出してしまうのである。このような状況では、政府による望ましい政策はどのようなものとなるだろうか?「Paradox of Thrift」が存在するゆえに、政府はいわゆる拡張的な財政政策(あるいは拡張的な金融政策)を行って経済が効率的な資本蓄積のレベルに達するのを遅らせることが、望ましい政策となりうるのである。

このようなストーリーは特に新しいものではないが、このペーパーの売りは、このような2つの対立した見方をひとつのきれいなフレームワークに落とし込んだところにある(その美しさはこのようなブログでは説明できるレベルを超えている、というか僕の力ではブログでは説明できない)。

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