On NBER Summer Institute

今年もNBER Summer Instituteに行ってきた。NBER(全米経済研究所)がだいたい7月いっぱいボストン(というかケンブリッジのRoyal Sonesta Hotel)で開催する学会で、個人的には少なくともマクロでは世界最高の学会だと思っている。発表されるペーパーの数は例えばSEDやCEFやAEAなどに比べて全然少ないが、ペーパーが厳選されており(発表するのもとっても難しい。そのうち発表したいものだ)、それぞれのペーパーに45分から1時間かけるので、その年の重要なペーパーについてじっくり学ぶことができる。また、参加者もおそらくはトップジャーナルに送ればエディターやレフェリーになりうる人がそろっているので、発表者のプレッシャーも大きく、もちろんそうした人たちのコメントもとても勉強になる。

ペーパーについては、印象に残ったものについておいおい書きたいと思う。日本語でもう一度メモを書くと覚える助けになると思うから。でもまずその前に、ペーパーというより、セッションの環境について書いておく。

今回、初めて、EFG(Economic Fluctuations and Growth)グループを見てきた(発表なんてとてもできない)。例年に比べてミネソタの人が多くかかわっており、知り合いが結構多いので楽しいかなと思ったからだ。EFGというのは、マクロのグループの最高峰で、7月第2週の土曜日に毎年開催される。マクロの別のグループはこのEFGの分科会的な位置づけとなっており、それぞれのグループの最高のペーパーがここに選ばれるような感じだと思う。EFGで面白いのは、それぞれのペーパーに1時間割り振られているものの、発表者は15分しか時間がなく、その後討論者が20分使って議論し、後の25分はフロアの誰でもコメントできるという構成である。それに、大体、討論者は、その分野のシニアでトップジャーナルに送るとエディターあるいはレフェリーに絶対なりそうな人が担当する。発表する人は、15分しかないので、細かいところには立ち入れないが、イントロだけしか話せないというのは避けたいので、EFG用の練習をみんなしているといっていた。今年でいえば、討論者は、Rogerson, Perri, Violante, Hall, Haltiwanger, Loukas Karabarbounisだった。例年に比べてバトルが少なかったといっている人はいたが、かなり激しく叩かれたペーパーもあって、見物人としては楽しかった。例えば、日本のマクロの学会とか作れるんだったら、こういうフォーマット面白いかななどと思っていた。

あと、面白かったのは、今年から始まったMicro Data and Macro Modelsグループ(EFGの分科会である)のセットアップである。Micro Data and Macro ModelsグループはEFGの翌週(7月第3週)の月曜日から木曜日までである。去年まで25年間はAttanasio, Carroll, Rios-Rullのグループだったのだが、今年からKaplan, Hurst, Violanteに変わった。初めての年なので、3人とも気合が入っていたように思う。初日の朝に来てみたら、机といすの配置をどう変えるかを一生懸命考えていた。例年縦長の部屋を使うのだけれども、これまでは、どのグループも、長い辺の一方の端にスクリーンをおいて、その前で発表するので、後ろに座っていると遠くて見えずらいし、議論もあまり聞こえないという問題点があった。彼らもそれを認識していたらしく、長い辺の真ん中にスクリーンをおいて、その前に左右にV字状に机といすを並べて、どこに座っても比較的スクリーンおよび発表者から近い感じになるようにしていた。これはヒットだったと思う。個人的には、大きな部屋のセミナーだと人がばらけるせいか、あまり議論が活発にならないような気がしているので、それなりに大きな部屋の場合、全部の椅子からスクリーンまでの距離の和を小さくできる方がいいと思っている。このV字型セットアップはまさにそれを実現していたと思う。

基本的にマイクロデータを使ったマクロの研究というのは流行りなので、このセッションは大盛況だった。オーガナイザーの交代に際して参加者を絞る方向にしたらしく、招待状の数も絞り気味と聞いていたが、毎日ほぼすべての椅子が埋まっていて、質疑応答も活発だった。

Micro Data and Macro Modelsのもう一つの工夫は、各発表45分なのだけれども、最初の5分と最後の2分は質問禁止にしたことである。最初の5分は、ミネソタ系のセミナーでよくありがちなのだが、イントロで質問責めにあって、全然進めないという事態を避けようという配慮。最後の2分は、まぁ、最後まで到達できないことがほとんどだろうけれども、最後位は結論を話させてあげようという配慮である。これも、結構、効果的だなと思った。

というわけで、これから少しづつ面白かったペーパについてちょっと触れていきたい。

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