RED on Money, Credit, and Financial Frictions

AEJ Macroの特集号とほぼ時を同じくして、今度はAEJ Macroと競合しているRED(Review of Economic Dynamics)が「通貨、信用、金融摩擦」という特集号を出した。このペーパーはAEJ Macroの特集号に入ってないのかと思っていたペーパーの多くがこっちに入っていたので納得している。個々のペーパーについて深く触れる時間はないので、軽くそれぞれのペーパーの内容をメモしておく。

Household Leveraging and Deleveraging
by Alejandro Justiniano, Giorgio Primiceri & Andrea Tambalotti
2000年から2007年の間に家計の負債は大幅に増加して、2007年以降は大幅に縮小したが、その背後にあるものは何かについてDSGEモデルを使って分析した論文。彼らの分析によると、担保制約条件(Collateral constraint)がゆるくなったりきつくなったりすることで生み出される負債の額の増減は、データの動きを説明するには弱すぎる。モデルによると、負債の額の大幅な増減は、担保制約条件の変動でなく、住宅価格が直接変化することで生み出されたと考えられる。いずれにしても、モデルによると、負債の大幅な変動がマクロ経済に与える影響は小さい。

Repos, Fire Sales, and Bankruptcy Policy
by Gaetano Antinolfi, Francesca Carapella, Charles Kahn, Antoine Martin, David Mills & Ed Nosal
現在のアメリカの破産法においては、レポ取引(Repo)において、借り手が破産した場合、貸し手は担保としてとってた金融差資産(国債など)を売ることができることとなっている。このことによって、たくさんのレポ取引を行っている大きな金融機関が破産した場合、担保に使われていた金融資産がいっせいに投売り(fire sales)されることでその金融資産の価格が暴落し、金融危機を悪化させる効果をもつ。その一方、借り手が破産した場合に担保をすぐに売りに出せない場合、借り手が破産した場合の担保の価値が減少するので、レポ取引が現在ほど活発ではなくなるかもしれない。レポ取引の最適な規制方法を考えるに当たっては、大きな金融機関が破綻した場合の投売りの悪影響と、(平常時の)レポ取引の大きさの間のトレードオフが存在することを示した。
 
Labor Market Upheaval, Default Regulations, and Consumer Debt
by Kartik Athreya, Juan Sanchez, Xuan Tam & Eric Young
2005年の実施された破産法の改正(それによってクレジットカード破産がしづらくなった)とGreat Recessionがクレジットカード負債の動きにどのように影響を与えたかをモデルで分析した論文。 Great Recession、特に失業者が職を見つけられる確率の低下、によって破産件数は上昇したが、2005年の破産法改正は破産件数の増加をペースを押させるのに貢献したことがわかった。

Credit Crunches and Credit Allocation in a Model of Entrepreneurship
by Marco Bassetto, Marco Cagetti & Mariacristina De Nardi
企業家が始めは金融制約の元で融資を受けて小さい企業を起こし、企業が成長してゆくモデルにおいて、Great Recessionのような大きなショックが生産活動に与える影響を分析した論文。企業家の資産が景気後退によって縮小した場合、新たに起業される企業の数は減少し、かつ、企業家が借りられる金額の制約がきつくなるので、それらの企業が成長するのに時間がかかる。よって、このようなモデルにおいては、経済に加わったショックがかなり長い間経済に負の影響を与え続ける。

Aggregate Unemployment and Household Unsecured Debt
by Zachary Bethune, Guillaume Rocheteau & Peter Rupert
 労働市場と金融市場の両方に摩擦(両方ともサーチモデル)を組み込んで、両者がどのように関連しているかを分析した論文。労働市場と金融市場の間には補完性が存在し、モデルでは失業率と借入限度額の間に正の相関が生じることを示した。以下のようなメカニズムによる。借入限度額が小さいと、モノを買おうという消費者の数が減少する。よって、企業の利益が減少し、企業は雇用者数を少なくする。失業率が上がると返済できないリスクが高まるので消費者は借りられる金額が減少する。

Anatomy of a Credit Crunch: From Capital to Labor Markets
by Francisco J. Buera, Roberto Fattal-Jaef & Yongseok Shin
金融危機がいつも失業率の大幅で継続的な上昇をともなうのはなぜかを分析した論文。2007-2008年のような景気後退が担保制約が急にきつくなったことで生み出されたとする(同じ担保で借りられる金額が減少した)とすると、生産性は高いが借り入れ制約に引っかかることで最適な生産サイズに拡大できない企業が多くなるので経済全体の生産量が減少する。結果として失業率が上昇することとなる。マイクロデータによると、クレジットクランチは、小さい、あるいは若い企業の雇用の成長率により大きな負の影響を与えることがわかった。このことはモデルで強調されるメカニズムと整合的である。

Tightening Financial Frictions on Households, Recessions, and Price Reallocations
by Zhen Huo & Jose-Victor Rios-Rull
借り入れ制約が急激にきつくなることで大きな景気後退が生み出されるメカニズムを分析した論文。借り入れ制約がきつくなると借り入れ制約に引っかかっている消費者の消費が減少し、彼らによって消費されなかった財・サービスが残ってしまう(消費者が消費する財・サービスをサーチすると言う仮定が効いている)ことで、消費される生産量が減少する。借り入れ制約にひっかかるのはより資産の少ない家計であり、借り入れ制約がきつくなると消費が資産の少ない家計から資産の多い家計にシフトする。資産の多い家計はサーチをあまり積極的に行わないので、消費されずに残る財・サービスがさらに増加する。これらの効果は価格が伸縮的でない場合により強くなることも示される。

Financial Business Cycles
by Matteo Iacovielo
住宅ローンのデフォルトがGreat RecessionにおけるGDPの減少のどの位を説明できるかをDSGEモデルを推定することで計測した論文。多くの住宅ローンがデフォルトされると、住宅ローンを貸し出していた銀行は資産を失う。もし銀行が最低限守らなければならない自己資本比率ぎりぎりで運用されていた場合、銀行は自己資本比率をキープするために貸し出しを減少させ、クレジットクランチを生み出し、負のスパイラルを生み出してしまう。推定されたDSGEモデルによると、このチャンネルはGreat RecessionにおけるGDPの減少の約2/3を説明できることがわかった。

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