Comparing Education Spending across OECD Countries

舞田さんという人は、いろいろなデータを簡単にグラフにして示すことをしょっちゅうやっている人らしく、時々、誰かが彼のグラフをリツイートしてるのを見かける。自分の主張に合うものを意図的に選んでいるように思えることと、あまりデータの信用性等について注意を払っているようには見えないので、(人が加工したデータを見る時はいつもそうだけれども)大体のグラフはまずは本当かなぁと思いながら見るのがよいと思うけれども、これだけいろんなデータを見てコンスタントにグラフを作るだけでもすごいなぁと思う。

今回は、教育関連の公的支出の対GDP比率をOECDの国で比較してみたというグラフが流れてきた。「教育に金を使わない国。ここ数年、ずっと最下位だ。」というコメントがついているので、多分、もっと金を使うべきだと思っているのだろう。おそらくは年金を除くと、大体において日本は政府のサイズが他国に比べて小さいのだけれども、いつも最下位というのは面白いので、そのデータの背景を知るべくほかのデータも見てみた。彼のデータソースはOECDのEducation at a Glanceというもので、教育関係の様々なデータを、OECD諸国間で比較したというものである。OECDのデータは使いやすい形で簡単にダウンロードできるので、とても有益である。とはいえ、データの作り方等、各国でいろいろな違いがあるので、あまり真剣に見てよいデータではないような気がするが、まぁ、比較の第一歩としては悪くないだろう。

まずは、舞田さんが作ったグラフを再現してみたのが以下のものである。教育関連の公的支出をGDPで割った比率(パーセンテージ)を、高い国から順に並べてある。
トップのノルウェーは6.3%、OECD平均は4.2%、日本は断トツで最下位の2.9%である。確かに低い。

まず考えたのは、これは、日本は教育関連の私的支出が多いのかなということである。というわけで、私的支出も含めた、教育関連支出の総額のGDP比のグラフを作ってみた。わかりやすいように、国の順番は最初のグラフと同じにしておく。日本は常に一番下、ノルウェーがいつも一番上である。
まぁ、やっぱり、公的支出のGDP比が高い国の比率が高い傾向にあるが、日本は断トツで最下位というわけではない。依然トップはノルウェーで6.4%。ノルウェーは教育関連はほぼすべて税金で賄っているということである。OECD平均は5%、日本は4.1%である。まだまだ低いが、例えば、イタリア(3.9%)より高く、ドイツ(4.2%)並みである。つまり、日本は、他国に比べて私的教育支出の割合が高いようだ。

これは、必ずしも悪いことではない。ある分野に政府が出すお金が少ないというのは、子育てとか、貧困とか、自分が重要だと思う分野に金をもっと出せとばかり主張する人からよく聞かれる文句だけれども、そのことは、税率が低いことの裏返しである。もちろん、税に累進性が高ければ、収入は少ないけれども大学に行きたい人に補助金を回すことと同じになるので、再配分、あるいは能力はあるけどお金がないから大学に行けない人を支援するという意味では恩恵があるけれども、それは、必ずしも、総額のGDP比の高低と一対一で対応しているわけではない。自分でお金を出すことで、インセンティブにはよい効果が生じているという面もある。

というわけで、税の総額を比較してみよう。下のグラフは、税収入をGDPで割ったものである。税収入には年金の貢献額も含まれているが、とりあえず取り除かなかった。
年金などの社会保障制度が弱い中所得国(例えばメキシコ)では低い傾向にあるが、日本はOECD平均(34%)よりちょっと低い31%である。例えば、消費税率を5パーセントくらい上げる(今の8%から13%にする)と、OECD平均に達する(消費はGDPの2/3くらいなので)。また、ノルウェーの公的教育関連支出がGDPの6.3%、日本は2.9%なので、差は3.4%。よって、消費税率を5パーセント上げると、だいたい、OECD最高の公的教育関連支出のGDP比率を達成することができる。10%まではいずれ上がることになっているので、もうちょっと上げて15%にするだけだ。日本の政府の教育支出があまりに少ないという人は消費税率15%を提案してみてはいかがだろうか。

あと、考えたことは、教育のコストってのは、大体どの国でも同じようなものだとすると、(一人当たり)GDPが高い日本のような国は公的教育関連支出のGDP比率は低めに出るんじゃないかということである。経済学の大学教員なんてのは世界のどこでも仕事は見つかるので、クオリティを一定とすると給料はどこで働こうが同じようなものになりうる。それに、日本の教育関連支出の総額が少ないのは子どもが少ないからではないか、とも思った。というわけで、学生一人当たりの支出額を見てみたのが以下のグラフである。もし、今書いた仮説が正しいなら、この数字は日本と他のOECD諸国で大体同じようなものなるはずだけれども...OECDのデータでは小学校から高校まで(primary and secondary education)と大学(tertiary education)で分かれているので、大学のデータだけ示す。
日本は少ない方であった。ルクセンブルグが何でこうなっているのかはよくわからない。舞田さんが示唆しているように、日本の大学は、学生一人当たりにかけているお金が少ないようだ。

では、教師の給料はどうだろうか?OECDのデータには、中学校(lower secondary education)の先生の最初の賃金のデータが含まれていたので、それを表したのが以下のグラフである。
日本の中学校の新任の先生の給料は年間30631ドル(340万円)ということだが、この数字がどのくらいあてになるのは感覚がないのでよくわからない。OECD平均は33260ドルなので、OECD平均より10%くらい低い感じであるが、極端に高いスイスやルクセンブルグのような国がある影響もあるので、OECDの多くの国に比べて極端に低いわけではない。日本の数字は、イタリア、韓国、フランス、と同程度である。

結局何が言いたいというわけではなのだけれども、いくつか個人的に重要だと思うポイントを挙げると:
  1. 日本は教育関連支出の公的支出のGDP比は低いが、高めの私的支出が補っている。
  2. 私的支出と公的支出を合計しても、教育関連支出のGDP比はOECD平均より低い。
  3. 消費税率をあと5%(10%→15%)上げれば、OECDトップの公的な教育関連支出水準に追いつく。

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